9月10日(金) 
こちら、西穂独標から見た西穂高、そして奥穂高方面。

今日は小屋への戻りで、半日休みをもらって上高地から西穂周りで岳沢へ。
実は私、恥ずかしながら独標から先はまだ歩いたことがなかったのです。 

岳沢の小屋番として、また毎日見上げている山々を歩いていないというのは
たいへんなコンプレックスでして、やっと実現した次第です。


なお、上高地から西穂山荘に上がるのも初めて。
上高地からの標高差850m、しかもずっと樹林帯の中というデータ通りの道でした。
でも、周りの風景が見えない分だけ朝一番にガッツリと登れるという面ではよかった。

西穂山荘へ挨拶にだけ寄って、先を急ぎます。
丸山まで上がれば流れる雲の上に焼岳と乗鞍岳。



この景観には岳沢は負けるな。
と思いつつも、小屋の窓からなら負けないぞとささやかな対抗心。
 (冬はいつもお世話になってる西穂山荘様に敵意は持っていませんので)

そそくさと歩みを進め、独標・ピラミッドピークは軽くスルー。
こちらは4峰あたりから振り返った風景。



西穂登山で面白いのはやっぱりこの連続する岩峰のピークを登ったり、下りたりするところでしょうか。でも、やっぱりけっこう危ないところだよなあ。独標〜西穂間はけっこうな数の登山者がいましたが、大キレットよりもこっちのほうがよっぽど怖いところだと思う。
 (私の場合、自分は怖くないけど他人が通っているのを見るのが怖いタイプ)

西穂高岳の頂上を

越えるとさらに怖い。

こんなところを夏には

たくさんの人が通るなんて…



風雨の強い日でも

通る人がいるなんて…



職業柄か、どうしても

そういうことを怖いと

思ってしまいます。

そしていつも見上げている天狗岩到着。
こちらの二人は昨日の雪崩跡のルート付替え現場を初めて通ったお二人。



話をすると、岳沢にテントを張って、この天狗沢・天狗岩を登るためだけに来たらしい。
今日はこの天狗岩の頂上でずっとノンビリ過ごすそうな。

しかも今夜も岳沢でテント泊だとか。
なんと、この天狗沢・天狗岩だけのために二泊三日!
 (けっして体力がないので“ゆっくり”というタイプではありません)

職業柄、メシと山を歩くのだけは早くて、そんな優雅な山歩きを楽しんだことはないのでとてもうらやましく思いました。最高の天気で、周囲の眺めも最高、こんな中にずっといれば気持ちも時間もゆったり流れることでしょう。


そんな二泊三日・天狗岩onlyを多くの方々にお勧めすることはできませんが、
今日歩いたこのコースは槍穂高に通いなれた上級者の人たちが楽しむには最高のコースだと思いました。ただ、登るだけじゃなくて急峻な岩場を登ったり下りたり・・・

例えば、一日目は自宅を朝早くに出て上高地・あるいは新穂高にお昼頃到着。その日は岳沢小屋か西穂山荘まであがるだけ。翌日に独標側あるいは天狗岩側から西穂高を縦走、上高地か新穂高に下山して帰宅。

一泊二日で岩稜歩きを存分に楽しめます。

夜行で山に入るのが苦にならない人は一日目に早朝から西穂〜岳沢へと縦走し、次の日は空荷でサクッと前穂を往復して帰宅。

そんな歩き方も楽しいだろうなあ、なんて思いながら歩いてました。

でも、こちらのルートは岩場を歩きなれた上級者向きです。
西穂高岳〜奥穂高岳間は一般登山道としては最難関、あるいは準バリエーションルートとして位置づけられるルートです。くれぐれも自信の無い方は足を踏み入れないように。



それでも行ってみたいという人は山岳ガイドを頼んで、
しっかりと確保してもらいながら進みましょう。




こちらは西穂高頂上から見た、
槍ヶ岳〜南岳〜涸沢岳〜奥穂高岳、そして西穂高岳。

山小屋で仕事を初めて18年目でやっとこのルートを全て繋ぐことができました。
小屋の人間て、小屋の周囲だけはディープに歩けるんですけど、
広範囲にはなかなか歩くことできないんですよね。