大天井ヒュッテ/大天井岳周辺最新情報
『山小屋便り』 平成20年8月27日掲載

26日、早朝4時、ヒュッテの玄関前では、真っ暗闇に霧が立ち込めヘッドランプの灯りに、水の小さな粒が
動き回って見える。点呼をして貧乏沢入口に向かって出発。

今回、知り合いの山岳ガイドに頼まれ、某M社の北鎌尾根ツアーに同行することになり、参加者9名+ガイ
ド1名+添乗員1名+私の計12名での北鎌尾根行きとなりました。
いつも単独での報告でしたので、写真には人が写っていないため壁の大きさとか、山の規模、ルートの状況が
解り難かったと思います。
今回、同行した皆さんを入れる事によってルートが少しは見やすい写真が撮れたと思います。
只、天気が悪かったために、写真はいまいちですが、ご了承下さい。

大天井ヒュッテ 小池

貧乏沢を下り出す頃から雨が降り出して沢づたいの岩や草付が滑りやすくなっている。夜が明けて明るくなる
まではヘッドランプの灯りに頼るのみ。スリップ、落石に非常に神経を使う。浮石の多いガラ場から沢に入る頃
薄明るくなってきた。
貧乏沢の下降。雨が降って滑りやすい

貧乏沢の下りは思いの外時間がかかった。

北鎌沢出合まで来ると雨は止んでくれたがガスは取れる気配はない。最悪の場合のビバーク覚悟のため水は3L
ザックに詰め込んだ。
視界のない北鎌沢の長い急登は、沈黙の中高度をかせぐ。
北鎌沢右俣の登り。

北鎌尾根の稜線に出てもガスに覆われているが、どうやら雨は心配なさそうである。たまに天上沢の向こう牛首
展望台方面がガスの隙間から垣間見えたりすると歓声が上がる。
目指す独標は以前ガスの中にて、目標物の無い登行が続く。天狗の腰掛に着いた頃には11時を回っていた。
ルートは独標基部からトラバースルートへと入るが先頭はガスにて見えない。
トラバースルートの棚状のトラバースとチムニーの写真です。
独標トラバース
独標トラバースのチムニー

知り合いのHガイドの先行にて、チムニー後もそのままトラバースルートを行き稜線に出たのはP11地点であった。
写真は、P12からの下降ルートにて
P12からの下り

その後P13,14と越えP15の直登は岩がザレていて落石も多く、疲労の多いメンバーの安全のためザイルを
出して確保しながらの登行とした。
P15の登り

P16から北鎌平手前まではトラバースルートを久しぶりに歩いた。尾根上を行く登山者が増えたためか踏み後は
少なめである。尾根ルートと違ってお花畑が豊富にあり楽しませてくれるが、ルートファイディングとトラバースル
ートにありがちな岩の出っ張りや浮石、さらに微妙なバランスを要求される場所は多い。
P16以降のトラバースルート

北鎌平まで登ると槍ヶ岳の穂先が、ガスの切れ間切れ間に顔を覗かせてくれ皆を元気付けてくれるが、既に夕闇
は近くなっている。
北鎌平からの最後の登りで穂先が見えた。

山頂の祠の直下にある最後のチムニーでは、再度ザイルを出して確保しながらの岩登りとなった。メンバーの殆どは
体力の限界といった感じである。
頂上直下のチムニー。

山頂に着いたのは午後6時半。急いで槍ケ岳山荘に向かったが下り始めて直ぐに夕闇となってしまった。槍ケ岳山荘
に到着したのはなんと7時を回ってしまっていた。
槍ケ岳山荘の皆さんご迷惑をお掛けしました。

今回の北鎌尾根、同行させて頂いて、北鎌尾根を目指す皆さんへのアドバイスです。

ガイドを頼んで連れて行ってもらうとしても、やはり絶対的に体力が必要です。    この体力の目安として、最低
限一般登山道のコースタイム以内で歩けること(休憩時間も含めて)それも、長時間を通してペースが落ちないだけの持
久力をつける事。
今回は、ヒュッテ発AM4;00〜山荘着PM7;00。なんと15時間費やしました。

これが最低限の北鎌尾根を登るための条件です。

自分で登ろうと思う方は、更に登山技術(登攀、幕営、地図、天候等々)を自分のものにする事が重要です。そして山
での判断力。

これさえ出来ていれば北鎌尾根は喜んであなたを受け入れてくれるはずです。