大天井ヒュッテ/大天井岳周辺最新情報
『山小屋便り』 平成18年10月2日掲載

秋雨前線の北上に伴い、昨日昼頃から降り始めた雨は終日止むことなく降り続きました。
このためかヒュッテを通り過ぎる登山者の数も少なく、冷たい雨音を聞きながら小屋
閉めの小屋内作業をしています。いよいよ後2週間にて今シーズンの営業を終了して
ヒュッテも冬の時期を迎えるわけです。

そんな中ですが昨日はビックリするような出来事がありました。ので報告しておきます。
昨日のHPで、雨具無しでの北鎌尾根の事書きましたが、実は夜6時頃から7時の間
にそのパーティーの3名と別パーティーの2名、合計5名がバラバラにて貧乏沢から
戻ってきたのです。無事にヒュッテに辿り着いたから良かったとは言えるのですが、
遭難すれすれの事態でした。
3名のパーティーの1人は自称?山岳ガイドで2名はお客さん。そのガイド゛がお客
さんを連れて北鎌尾根を登攀するという良くあるパターンなのですが、1名のお客さ
んが車の中にカッパを忘れてきてしまっていたにも関わらず「・・時までに抜ければ
大丈夫。」のような説明をして、午後から天気は崩れるとの忠告を無視して貧乏沢に
下って行きました。別の2人パーティーもガイドさんが行くならと後を追ってしまっ
たわけです。
まずここに大きな間違いがあります。カッパを携行していない時点で登山は取りやめ
るべきで決行した事。雨が降らなくても風が吹けば今の時期カッパは必需品であるこ
と位は普通の登山者でも解かっているはずです。

更に、このガイドさん、北鎌尾根を全く知らなかった事。
天上沢から北鎌沢に入ったら右俣を登るというのは、北鎌を目指す登山者なら事前の
情報で誰でもが知っている定番で(この頃は殆んど左俣に入ってしまう登山者は居な
いのですが)、なのにこのガイド何処でどうなったのか尋ねると、天上沢の名前も北
鎌沢の名前も出てこない。北鎌沢に入ってから右俣と左俣に分かれているという事す
ら知らない。
それで、間違えて左俣を登ってしまったらしい。それも帰ってきて話を聞いて「それ
は左俣です」と説明するまで右俣だと思い込んでいる始末。戻ってきた判断だけは正
解ですが。

そして、一番先にヒュッテに戻って来たのがお客様だった2人、ガイドはそれから遅
れる事1時間。お客様に自分の荷物を分けて持ってもらって・・・考えられません。

更に更に、登山靴のソールが取れてしまうと言うハプニングも演じてしまったガイド。

皆さんも北鎌尾根を登りたくて登りたくて、でも自分では登れない。そんな時山岳ガ
イドの力を借りて登る。これはもう定番ですよね。頼んだらこんなガイドだったら
困っちゃいます。こんなお粗末な山岳ガイドは他にはいないと思いますけど、事前に
よくチェックしてから依頼しましょう。

昨日は、もう二つ。
シアトルのアメリカ人。なんとカッパ無し、更に半ズボンにズック式の登山靴。び
しょ濡れの状態で4時頃到着。今朝強雨のため見合わせていた槍ヶ岳行きを我慢でき
ずに9時頃出発。心配だったので槍ヶ岳山荘に連絡。到着の報を聞いて一安心しまし
たが、無謀ですね。一歩間違えば遭難です。

夜、7時半過ぎ玄関が開く音。出てみるとこれから燕方面に行くという2人パー
ティー北鎌尾根で時間がかかりすぎたとの事、「暖かいもの出来ますか?」というの
で、「今から行くのは危険だから止めましょう」と説得したにも関わらず立ち去った
登山者、中房まで下りたいと言っていたのですが無事に下りてくれたでしょうか?

あまりにもいろいろあった10月1日の午後、疲れました。
大天井ヒュッテ 小池

てるてる坊主もむなしく首をたれ、雨は降り続いていました。

来春用に襟布を取り替える作業や厨房の大掃除は、こんな天気でないと出来ませんね。