大天井ヒュッテ/大天井岳周辺最新情報
『山小屋便り』 平成18年 7月12日掲載

7月11日、早朝4時30分穂高や裏銀座の山々が真っ赤に染まり出しました。予報
では午後から崩れるとのこと、いつもより早めの5時にヒュッテを出ました。朝焼け
は悪天の前触れ?あまり信じたくはなかったのですが案の定、稜線に飛び出た8時半
頃から濃いガスと激しい雨になってしまいました。
今回の北鎌尾根は今までにあまり通った事のないルートをと考えていたのでちょっと
出鼻を挫かれた感じです。
それでも6時半に北鎌沢出合に着いたときはまだまだ上空の雲は高層雲のみ、天気も
持ちそうだったので初めて左俣に入りました。

何故、今回、左俣を登る事にしたのか?と言いますと前回ご紹介した写真、ビックリ
平付近から撮った物ですが左俣の雪渓が稜線まで切れないで繋がっているのが確認出
来ていたからなんです。
通常夏の北鎌においては北鎌沢の右俣からのルートが一般的で左俣には入らないよう
にとのアドバイスをして来ましたが、それは例年ですと7月には左俣の雪渓が所々切
れて通行できなくなるのと、雪渓がなくなると岩と崖の危険な沢になってしまい一旦
登りつめると行き詰ってしまい下るのもザイルがないと下れない状態になってしまう
からなんです。登れる時期としては6月下旬、精々7月上旬がタイムリミットと考え
てください。
ところが今年は残雪が多いのが幸いして稜線までの雪が残っていたために登れると判
断した訳です。もちろん雪渓が繋がっているからと言って誰でも行かれる訳ではな
く、稜線直下の雪渓の斜度は50度を越える雪壁登りとなるため体力はもちろんの
事、雪上技術にも優れていないと危険ですが。

左俣を登るメリットとしては、稜線に出る場所が独標の基部に直接出るため時間短縮
と天狗の腰掛までの急なハイ松帯を通らなくても良い事なんですが、クロユリ等のお
花畑は見られないのが残念ですね。

ここでは、貧乏沢の下りの雪渓と右俣の雪渓、左俣のルートの報告をします。

貧乏沢の残雪は上下2箇所、上部が300m下部が600m程残っています。傾斜は
さほどではないですが心配な方はアイゼン、ピッケルを携行下さい。雪は8月上旬頃
までは残りそうです。

右俣には大きく分けて3ヶ所の残雪があり、上部の雪渓は斜度もきつく残雪量も多い
です。こちらも7月下旬頃まで残りそうです。

左俣には、1900m付近から2800mの稜線までずーっと雪渓登りです。
大天井ヒュッテ 小池

11日の朝は見事な朝焼けでした

貧乏沢の上部雪渓は約300m残っていました

下部雪渓は約600mの残雪です

北鎌沢出合一本のカラマツが目印

右俣の雪渓は現在大きく分けて3ヶ所、最上部の雪渓は斜度約50度、20日以降も残りそうです

左俣は沢が広く水も豊富。右俣は狭く流水も少なめです

今回は左俣をトレースしました。1900mから雪渓が現れました

上部は両側に大きな壁と支流が何本も出てくる

最後の分岐、雪は稜線まで続いていましたが、持って後一週間でしょうか

稜線直下300mは約50度の雪壁になっています。天狗の腰掛と独標の間に出る