大天井ヒュッテ/大天井岳周辺最新情報
『山小屋便り』 平成15年7月22日掲載

北鎌尾根番外編。ウーちゃんの北鎌日記

僕は今、大天井ヒュッテでかわいがられているオラウータンのウーちゃんです。
なんと今回7月16日、北鎌に連れて行って貰っちゃいました。とっても怖かったけ
ど無事完登する事が出来ました。その時の模様を皆さんに写真と共に報告します。
まずは貧乏沢の雪渓です。僕が行った時はなんとまだ2箇所の長ーい雪渓が残っており、
快適にグリセードで下ったけれど8月の初め頃まで残りそうなのでピッケルは忘れな
いようにしようね。


貧乏沢下部の雪渓は500メートルも続いていて、僕を連れて行ってくれたKさんは
楽しそうに下っていたけど、僕のために右側からの支流から落ちる滝のところで写真
を撮ってくれました。この辺は雪が解けると浮石が多くとても歩きにくいという事でした。

貧乏沢を下りると、天上沢に出ます。ここには沢山ビバークした跡がありますが、大
雨になったりするととっても怖いのでもう少し登った右岸でビバークした方がいいそ
うですよ。

さーて、ここからが北鎌の始まり始まり。ここは北鎌沢の入り口です、約200メー
トルほど登ると沢が二つに分かれていてここは小さい右側の沢に入らないと駄目だ
よ。間違って左の方に行って大変な事になった人が何人も居るんだって。くれぐれも
間違えないようにね。

北鎌沢を登って行くとアーチになった雪渓が出てきました。これは今ではもう融けて
なくなっちゃてます。でも、面白いでしょ。

北鎌沢を抜けると北鎌沢のコルに着きました。テントが一張りはれるくらいのスペー
スがあって、千丈沢側にはここでビバークした人たちが捨てていったゴミが一杯でし
た。持って行った物は北鎌に限らず持ち帰ろうね。そこからハイ松帯の急登を登ると
独標がドーンと現れました。ここが通称「天狗の腰掛け」と呼ばれている所だよ。い
よいよ北鎌の核心部に入っていきます。

独標のトラバースがここから始まります。踏み跡に沿って大きな岩峰を千丈沢側を
辿って行くんだよ。細いリッジを暫く行くと、残置ハーケンに結ばれた古いザイルが
あって約5メートルのチムニーを登るんだけど、3、4級程度の岩登り技術があれば
ザイルを使わなくても登れるよ、ザイルを使う場合はハーケンとザイルの安全を確認
してから登るようにした方がいいみたいだよ。そこを超えれば稜線はすぐだからね。

独標から上は基本的には稜線上にルートを取って進めばいいんだよ。この辺は、去年
変な人がいてペンキマークが危険な場所に行くように点いていて今回Kさんが危ない
マークは全部消してくれたので、去年前の状態に戻ったんだよ。その代わりガスった
りするとルートファイディングが難しいので気を付けてね。ここでKさんはとっても
ペンキを消すのに苦労してたんだよ。

この人が僕を連れて行ってくれたKさんです。かっこいいでしょう。

 独標から上は基本的なルートは尾根上を取った方が早いし間違いないんだよ。トラ
バースルートは何本かあるんだけどどれもかえって変な踏み跡があったり、めっちゃ
大回りしたりと長くて疲れちゃうような所だよ。特にペンキマークのトラバースは一
番遠い長いコースになっているので、時間もかかるし疲れるんだよ。でも、自信のな
い人はそれを使ってもいいかもね。どちらも北鎌平上で合流して又、稜線上とトラ
バースとに別れるんだけど、ここも稜線上がお薦めだよ。写真はその上の大槍直下で
撮影したんだけど、この辺りはペンキマークが3メートル置き位に点いていてさすが
のKさんもお手上げ状態だったんだよ。最後のチムニーの間違った表示だけはちゃん
と取ったんだけどね。

ヤッホー。やったー。槍の頂上の祠の前で記念撮影でーす。とってもいい天気に恵ま
れて、ペンキマークを消しながら登ったKさんは大変だったみたいだけど、ザックの
上から頭を出していた僕はとっても楽しい冒険が出来ました。ちなみに、今回のか
かった時間は、大天井ヒュッテ(6;00)天上沢出合(6;55)北鎌沢出合
(7;10)北鎌沢のコル(8;30)独標取付(9;45)マーキング消し作業。
槍頂上(15;45)でした。あまり参考にしないでね。

翌日、槍ヶ岳山荘の前で、昨夜飲み過ぎのKさんの変わりに槍沢をバックに反省ポーズです。

17日。槍ヶ岳山荘のとっても暖かい人たちとのお別れです。僕も皆に可愛がられま
したが大天井ヒュッテへ帰らなくてはなりません。山荘の全員ではないけれど一緒に
写真を撮りました。こうして僕の北鎌山行は無事終了しました。北鎌を登るには、体
力。技術。ルートファイディング。すべて持ち合わせていない人は必ずそれなりの人
と共に登って欲しいと思いました。皆さんも、もし北鎌を目指すなら日ごろのトレー
ニングを積んで自信を持って北鎌にチャレンジしましょうね。