松本市教育会報 平成20年7月18日
第262号より
不易と流行(32)
松本市立 芳川小学校 木下 誠一郎
松本市立芳川小学校は、明治四十二年年の芳川尋常高等小学校の設立を起源とし、平成二十一年度には、創立百周年を迎える学校です。
この間、明治四十四年には、現在の芳川児童センター(松本市大字芳川村井町七二四の一)の場所に校舎が建てられ、その年には、青年会が桜や柳・ポプラ等の樹木を植え、敷地内の整備も順次進められたとのことです。その際に植えられた藤の木が、現在の芳川小学校校門横に移植され、今年、数年ぶりに花を咲かせました。
また、昭和四十五年には、校舎の老朽化と児童数の増加や国道十九号線を通過する自動車の騒音のため、学校新築移転の気運が高まり、連合町会長や各町会長
・PTAを中心とした芳川小学校移転改築期成同盟が結成されました。
そして、校舎移転改築規成同盟は、教育環境施設の充実と通学路等に関わる交通安全対策を十分に行うことなどを願って、市と度重なる懇談を行い、昭和四十九年四月、現在の芳川小学校(松本市大字芳川村井町三六六番地)の地に、校舎が新築され移転しました。
当時の、校舎落成記念運動会の航空写真には、周りを田に囲まれ、広い敷地の中には校舎とグランド二一カ所の築山があるだけの芳川小学校が写っています。この地に校舎が移転した当時は、まだ樹木等の自然環境が整えられていないことが分かります。
それから、三十四年。
春、芳川小学校の敷地には、桜の花が咲き誇ります。そして、「今年も桜が咲いているのを見に来ました。この桜は、この学校が造られた時に我が家で移植したものです。写真をとって、遠く嫁いだ娘に毎年送っています。」と、学校を訪れる方がいらっしやいます。
夏、クヌギの木にはクワガタ虫が息づき、虫かごを肩にかけそっと採りにくる子どもたちがいます。
秋、朝早くからトチの木の下に子どもたちが集まります。実が落ちるまで我慢できず、長い棒で突いている子どもたちもいます。
冬、築山は格好のそり滑りの場と変わります。
その他にも、絶滅種である針桑や、「旧芳川小学校にあるタキソジュームを私の父が挿し木で増やしたものです。」など、いわれのある木々が植えられ、ずっと芳川の子どもたちを見守り続けています。
現在、芳川小学校では、地域のスクールファーム支援会の皆様とともに、三年生は加工トマトの栽培を、四年生は箒草の栽培と宥づくりを、五年生は米作りを行います。
また、毎日子どもたちと一緒に歩きながら、子どもたちの安全な登下校を見守り続けてくださる地域の方々がいらっしゃいます。不審者対応など、ことある毎に、「私たちにできることはありませんか。」と協力を惜しまない保護者の皆さんや地域の方々がいらっしやいます。
このように、芳川小学校には学校設立以来、保護者の皆さんや地域の方々の、「より豊かな自然環境と安全・安心な学校で子どもたちを学ばせたい。」という願いが、時代時代の課題によって姿形を変えながらも連綿として続いています。