南岳小屋・管理人の日本最高所のオンライン日記


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2001年10月1日(月)〜10日(水)

日付 今日の出来事
10/1 この日記も残すところあと10日となり、これが最後のフレームとなります。 ま、まだ感慨にふけるのは早いのですが・・・。
少し先の話になりますが、「山と渓谷」11月号(10/15発売)の小屋番365日というコーナーにこの日記が載ります。載るという言い方はおかしいか。見開き2ページの連載企画にこの日記が使われるそうです。 この小屋にあるバックナンバーを見てみると涸沢ヒュッテの山口孝さんを始め全国の山域の代表のような方々が飾るこの紙面を、“今回は趣向を変えて…”ということでこの日記の何日分かを使うということなのです。 まあ、何を言いたいかと言うとせっかくこの企画を考えてくれた山渓編集部の森山さんに敬意を表してみなさん立ち読みなんかをせずに買って下さいというわけです。 どうなんでしょうか、みなさんは普段から山渓や岳人を買いますか?私は「広告掲載誌」としてだいたいの号が会社にあるのでそれを読むか、広告掲載のない月なんかは「なんか関係する情報でも載ってるかな…?」とか「写真コンテストに 南岳からの写真が選ばれてるかなぁ…」と立ち読みはしますが、ここ10年近くは自分で買ったことはないのです。(いったい何を書いているのだろう、こいつは!)
今日も大荒れの天気でまったく通る人もない一日でした。と、いうよりもこんな日にこの稜線を歩く人がいるとすれば、そのことの方が不思議といえば不思議です。明日には晴れるかなあ? 、  
10/2 今日も大荒れの天気です。麓の松本市はいい天気らしいのですが、ここは20mを越す強風と雪こそ降らないものの低温のため濃霧が小屋や岩に氷となって付着(結氷)しています。そんな天気の中なのに今日はお客さんが来ました。 槍沢から天狗原経由或いは槍平から登ってくるのならわかりますが、槍岳山荘からこの従走路を来たのです。なんと言うか・・・、正気の沙汰とは思えません。無事に着いたからいいようなものの、悪天時の秋山の恐ろしさをしらないのでしょうか?そういえば九州の人だったな。
で、今日も外での作業は不可能なので小屋内での在庫整理に終始していました。今シーズンはもう不要と思われる食材や売品類などを一斗缶やダンボールに詰めて倉庫にしまい込むわけです。なにしろ冬期間は−30度にもなる小屋内ですからその辺になんでもほったらかしていけばいいというものではありません。 けっこう面倒な作業ですが、「あと一週間♪」などと言いながらやってます。
10/3 また縁起でもない話しですが、今日もキレットで遭難事故があったようです、これで今シーズンは4人目となりました。現場は北穂の直下のこれまたなんともないところで、時間と場所からして南岳を昼頃に通過していったお客さんかと思われます。 なぜ毎回・毎回こんな縁起でもないことを日記上でお知らせするかというと、これを読んでる方々に少しでも注意を促したいからです。だいたい昨今の遭難事故というのはほとんどがなんともない普通の登山道でバランスを崩すとか、足を滑らすとかそういう不注意が原因で起こっているのです。つまり、そんなに危険な場所でなくても、だれでもその危険と隣り合わせということ。ということは誰でもそういう事故に遭う危険性があるってこと を自覚したうえで山に来てもらいわけです。幸いというか、今年のキレットにおける事故は全て北穂寄りで起きているので、南岳から出動したことはありませんがきっと遺体の収容に出てる北穂の人たちは「もう、いい加減にしてよ・・・」と思ってるはずです。頼んますよ、ほんとに。
10/4 小屋の雨樋を撤収しました、屋根に降った雨水をタンクに貯めるための重要なライフラインです。(ご存知のと おり、この小屋は100%雨水利用です)
6月の小屋開け頃はヘリでの荷上げ前にまずこの雨樋とタンクを設置するために槍岳山荘から日帰りで作業に通 うことから始まるのです。水というのは人間の生活の源です、飲料・炊事・洗い物・洗濯・水洗トイレなど全て に水は生活の基本ですから。文明社会では蛇口をひねれば水が出るのが当り前で、忘れがちなことですが。
そんな大切な水ですのでこの小屋では1リットル200円で販売しています、年間の水の売上は約30万円ほど ですが、上記のような作業人件費・設備維持費などを考えれば妥当な線でしょうか?もちろん下界でも水道代を みなさん払っていることでしょうから。ところがです、そんな貴重な水を勝手に取っていく人もいるんですね。 この小屋を利用した人は気付いたかもしれませんが、ここではフロントの横でセルフ方式で水を販売していま す。 いちいち「水を下さい」という人の水筒を預かり、厨房の蛇口から水を入れて、金をもらうという一連の手間を 考えるとセルフ方式のほうがよっぽど手間が省けますから、なにぶん少ないスタッフで運営している小屋です し。まあ、そういうわけで多少の損失はあっても利用者の良心に委ねているわけですが、回収率は70%といっ たところでしょうか。利用者のみなさんにはよろしくお願いしたいところですが、このHPを見ていただいてい る方々には無用なお願いでしたね。
10/5 今日は再び雨模様となりました、天気が短い周期で変っているようです。でも明日からの三連休はお天気よさそうですね。
お天気さえよければこの小屋もそこそこは混むことは予想されますが、さすがに涸沢ほどではありません。せいぜい50〜60名というとこでしょう、一枚(一畳分)の布団に二人ということはあってもそれ以上ってことはありえません。 そういえば、一昨年の体育の日の三連休の初日に涸沢に泊まり、翌日ここに泊まったお客さんが、1枚の布団に2人で喜んでました。いったいどういう状況だったんでしょう。聞くところによれば6畳の部屋に20人寝るそうです。また一説によればその頃は涸沢ヒュッテに700人、涸沢小屋に500人泊まるというのが相場らしいです。 恐ろしいですね、恐ろしいというのはそんなにたくさんの人が小屋に泊まるということもさることながら、テントと日帰・通過も含めて約2000人・大型バス50台分の人がこんな山奥へとゾロゾロ大挙して押し寄せるという事実のほうが恐ろしいです。でも、確かに涸沢の紅葉はスゴイもんな、特に今年はピッタリと見頃と三連休が重なったし。一度は行ってみたいと思うんですが・・・。
10/6 昨日の夕食のことですが、ご飯(米)が足りなくなりました。遅くに来るお客さんが多かったからです。米なんてものは遅くに着いた人が来たから「じゃあすぐに炊きますね」と言って炊けるものじゃぁありません。ここでは夕方の4時になったらそれまでに着いてるお客さんの数から勘案してやや多めにご飯を炊きます、どこの小屋でも同じようなものだと思いますが。昨日の場合は外は雨こそ上がったもののガスで視界は20m・風は15m/s、夕方4時時点のお客さんは3人。天気から考えて、もうそんなには来ないだろうと考えて夕食の用意を始めます。そうしたら、5時を過ぎてパラパラと来るわ来るわ。 結局、最後に来た6時のお客さんの頃にはもうご飯が残ってなかったのです。もちろん従業員用のもありませんから、我々もインスタントの焼ソバを食べました。
さて、ここで何が言いたいか! 山の雑誌やガイドブックには「山小屋には午後の早い時間(午後2〜3時)、遅くとも4時頃には着くようにしましょう」と書いているはずです、だいたい。それが登山を行う上でのルールであり、山小屋に泊まるうえでのマナーだと思うのです。山小屋はそのルールとマナーを基準として運営しているわけですから、それに外れる人いうのは困るわけですね。なぜか?それはもちろん上記のような食事の都合もありますが、遭難防止対策上でも大切なことだと思いませんか。しかも昨日の場合は悪天・強風・低温(気温2度)、そんな中を日の短い秋に夕方5時を過ぎてゾロゾロとくるわけです。想像してください、もし夕闇迫る薄暗い・足元のおぼつかない途中の登山道で捻挫でも して動けなくなったら。昼間であれば他に通る人がいるか、ゆっくりでも自力で小屋にたどり着けるであろうところが、夕方遅い時間であるがために通報を頼む登山者もいない、自力で行こうにも暗くなって動けなくなる。そうなると待つのは疲労凍死しかありません, たかが捻挫のためにです。秋の3000mの山ってのは本当にそういうとこなんです。遅い時間に行動するということはそういう危険性が倍増するということなんです。ところが遅く来たお客さんに限ってそういう話しをして注意を促しても「我関せず」って顔をしてます。いったいどういうつもりなのかとあきれますが、諭すこちら側がアホらしくなるのでそれ以上はもう言わないことにしています。
最近、HPを見てる方から「また来年も小屋日記、なんやかんや書いてください、辛口なコメントでちょうどいいみたいです。」というメールを頂きましたのであえて言わせていただきます。山小屋にとっては“遅く来る客がイチバン迷惑”です。
10/7 昨日・今日と連休の人出に加えて小屋閉め作業とが重なって一日中、「ハァハァ・・・」と息もつけぬ忙しさです。
ということで、今日はこれで・・・。あと4日でこの日記も終わりというのにスイマセンね、本当に忙しいんです。
10/8 体育の日の連休が終わりました。ある意味この連休というのは恐怖なのです。と言うのも、小屋閉めを間近に小屋内の部屋や設備なんかはある程度縮小しているうえに、寒波などが来ようものなら水道は凍結して水も出なくなるし、食材は足りるかとか、とにかく心配の種は尽きないわけです。 それに加えて、天気予報では9・10日とあまり天気がよさそうじゃないので小屋周りの小屋閉め仕事をいまのうちにやっっとかなきゃ!!ということでこの三日間は息つくヒマもない忙しさだったわけです。
そして、ようやく夕方になってパソコンを開く余裕がでたというわけでした。
下山まであと三日。早く下りたい!それだけです。、
10/9 お久しぶりッス、増山です。いやぁ〜今日も終わりましたよ! 毎日下山を指折り数える日々が続いています。 今日は午後から天気が崩れるという事だったので午前中に集中して小屋閉め作業をやっつけてしまいました。 その甲斐もあってか、あとは冬の間小屋が雪で潰れないように、サポートと呼ばれる鉄の柱を建てて、 窓は冬戸を閉めて下るだけッス。・・・・って言っても、細かい仕事はまだ結構ありますけど・・・・・。 そんな訳で、ちょっと早い気もしますが「皆様、今年もありがとう御座いました。」 僕がこの日記を書くのもこれが最後だと思いますので、この場をお借りしてご挨拶まで。
10/10 いよいよこの日記も最終日となりました。6月21日から約140日、休みのため休載することはあっても小屋にいる限りは毎日欠かさずによくやりました、自分を誉めてやりましょう。 南岳小屋ホームページを始めて3年目で、当初はこのマイナーな小屋のページをなにかの間違いで見に来てしまった人にまた見に来てもらえるようなページ作りを目指してやってました。実際には一年目の夏は滑落して1月半入院していたので夏の話題は少なかったものの、気象情報は病院から毎日電話で確認して、更新したりと それなりに頑張っていたんですよ。そして去年の2年目はコマメに最新情報を更新することでヒット数も増え、3年目の今年は最新情報だけでは伝えきれない季節の話題や発したいメッセージなどを載せるために始めたこの日記が大きな反響を呼び、たくさんのメールや「いつも読んでますよ」と実際に声をかけてくれる人が思いのほかたくさんいたことがうれしかったです。 (注:実際には「あ、ありがとうございます」としか御礼は言ってないと思います、こう見えてけっこう人見知りするもので・・・) また、ここ数日たくさんのメールを頂いてますが忙しいものでほとんど返信してませんが家に帰って落ち着いたら必ず返信書きますのでご容赦ください。(いつもは即日返してるんですよ)
さて、来年!? はっきり言って毎日の日記は大変です、時間的にもネタ探しも。今年のこの日記で多くの読者がいらっしゃることが判明したので来年は掲示板にでもしようかと思ってます。(HP代に別料金がいるそうなので社長の承認が必要となりますが・・・)そうすれば、いつもの辛口なコメントも果たしてどういう風に受け止められているのかとかもわかりますしね。
それでは長いような短い間でしたがありがとうございました。 。


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