南岳小屋・管理人の日本最高所のオンライン日記


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2001年9月1日(土)〜10日(月)

日付 今日の出来事
9/1 さて、9月です。9月の声を聞いたとたんに今朝は初霜柱となりました。最低気温は0.1度です。昨日までは気圧の谷や前線の影響ですっきりしない天気だったのですが、昨日の夜からはスッキリと晴れて放射冷却で冷えたようです。
ところで昨日までお休みをいただいていたのですが、27日に下山するのに天狗原〜槍沢を通ったらもうすっかり花々も秋の装いでした。詳しくは「最新情報」で更新していますが、槍沢を通ったのは6月中旬以来2ヶ月ちょっとぶりで、前回はまだ大曲りから槍までずっと雪渓上だったのに、知らぬ間に季節は残雪期から春・夏を飛び越え秋になってるなんて、やっぱり山の夏は短いんですねえ。
9/2 昨夜も良い月夜でしたので、今夜もその話しです。以前に書いたような、谷という谷を埋めつくすほどの見事なまでの雲海ではありませんでしたが、月齢14くらいの月に照らし出される雲海はやっぱり素晴らしいです。昨夜は消灯後に常念平へ行って大きな岩の陰で風をよけ、その光景を見ながら友人と携帯電話で話しをしていました。
弊社の会長(穂苅貞雄)によれば月齢は10〜14くらいがちょうどいいそうです。それ以前だと光量 が足りないし、それ以上になると月の出の時間が遅くなるために8時や9時という我々が月を楽しむ時間にはまだ角度が低いからだそうです。しかし、月の明かりの力ってのはすごいものです。このまわりの山々はもちろん、遠くは白馬連山や100キロも離れた白山まで見えてしまうのですから。
でもそんな月夜も楽しむお客さんは誰もいないんですね、やっぱり気温2度では誰も外には出たがらないんでしょうか・・・。
9/3 今シーズンは事故が多いと以前にも何度か書いてますが、昨日も落石を額に受けて血まみれになった人がいました。まあ、この人は西鎌尾根で落石を受けて、槍岳山荘で応急処置を受けてから南岳まで来たのですが、もう大丈夫だろうとバンソウコウを剥がしたらまた血が吹きだしたというちょっと変った事態だったのですが。それでも頭部の出血なので、止血のためのタオルが2枚ほどグッショリとなるくらいですからすごいですよね。 一応、私も日本赤十字社の3日間の講習を受けており「救急員」という資格はもってますので応急処置は出来ますし、今年は落石で頭部に怪我をする人がおおいので頭への三角巾の巻き方はすっかり得意になってしましました。そんな話はどうでもいいのですが、ここを通過してキレットに行く方の2割ほどはキチンとヘルメットを持ってきています。やはり落石の多い(特にA沢のコル〜飛騨泣き)ところですから、できればヘルメットを持って来て欲しいところですね。
9/4 今朝友達に携帯からメールを送るのに小屋裏の高台(獅子鼻)に行くと雷鳥の親子がいました。夏の初めには6羽のヒナがいた親子だと思うのですが、だいぶ前からヒナが2匹に減っているというような話を聞いて心配をしていたものの、その後は順調に育っているようで安心しました。 身体も親鳥と同じくらいまでに成長していたし、もう少し頑張って欲しいものです。しかし最近になってイヌワシか熊鷹らしき大型の猛禽類やハヤブサなどを多く見かけるようになり、まだまだ心配ですね。でももうひとつの天敵・オコジョは最近見かけないなあ、いつもだと夜中に残飯を取り合う鳴き声がよく聞こえていたですがその声もあまり聞かないしな。
ヤツらも厳しい環境の中で頑張ってるんだね、うちらもあと一月わずか寒いけど頑張ろうっと。
9/5 気象情報にも書いてますが、今日も一日中霧のなかでした。まあ、こういうところですからガスには慣れっこなのですが、今年の特徴としては風がないということです。普通であれば天気が悪ければ風が吹くというものなのですが、今年はガスで日差しもないし風もないという日多いのです。原因は上空のジェット気流が北に大きく蛇行しているからだと思うのですが、風力発電にも重きを置いているこの小屋としては困ったものです。 風も日差しもなければ風力発電も太陽光発電も出来ないので自慢のバイオコンポストトイレも日中は稼動できません、せいぜい昼間の小屋内の照明用程度にしかなりませんから。さらに困ったことには、これから徐々にお客さん用の枕カバーや襟布・カーテンなどを洗濯していかなければならないのに、風がないと洗濯機も動かせないのです。お客さんにとっては風のないほうが歩くにはいいのでしょうが、この小屋にとっては少し困った問題なのです。
9/6 今日は8月に新設した中岳の登山道(最新情報8/2参照)に誘導用のロープを張りに行ってました。このルートはペンキ印などもしっかりと整備してあるのですが、一部に昔の踏跡が交錯しているところがあるので間違ってそっちのほうへはいって行かないようにするための処置です。 実際に十数年前にここで道を間違えてドンドンと下っていって遭難死した事故もあったそうですので。ただ、そのためのロープや鉄製の杭などの道具が約30kg、久しぶりにこんな重い荷物を持ってあるいたのでエライことでした。簡単な作業だとタカをくくって行ったら、途中でロープはこんがらがるし、予想以上に作業に手間取ってしまって、何も食料などを持たずに来たものだから腹は減るし、けっこう疲れました。
朝のうちは天気が良くて久しぶりの山歩きだし、秋空の写真でも撮ってHPにでもアップするかと 思ったら急に天気が悪くなって写真も撮れないしさ。まったく疲れてしまいました。
9/7 きょうは(最近はいつも)話題がないので、この近辺の例年の紅葉状況でもお伝えしましょう。 紅葉といってもこのあたりは紅葉するような広葉樹がないのでここから俯瞰する状況ですが・・・。
この付近での紅葉の一番手というと天狗原(標高2500m)や本谷カール(2600〜2400m)ですが、これらはだいたい9月中旬から徐々に色付き始めて9月下旬に見頃を迎えます。そして涸沢(2300m)や槍沢上部(2100〜2300m)では9月下旬から10月上旬、槍沢下部や本谷橋付近(1800〜2000m)で10月上旬から10月中旬、上高地付近で10月中旬から10月下旬といったところでしょうか。 ただしこれにも年により偏差があり、去年などは初雪が9/3にあったにもかかわらずその後の冷え込みが弱くてようやく天狗原付近の標高で見頃を迎えたのが10月に入ってからということもあります。かと思えば10/10の体育の日には馬場平(2000m)で葉っぱがもう一枚もなかったということもあります。さて、今年は夏の前半は猛暑が続き、8月に入ってからは適度に雨が降るという天気だったので紅葉はそこそこ期待できるかもしれません。 あとはこの後の冷え込み次第ということになります。さてどうなるのでしょうか・・・。
9/8 この小屋の営業も残り一月あまりとなりました。9月に入ると水もそんなにも必要なく、雨も適度に降るので必要量だけを残して、余剰分水用タンクの水を流してタンクの掃除をしたり、トイレの便槽に水を流しいれたうえで汲み出し(放流)したり、小屋の外壁に防腐剤を塗ったりという 小屋閉め作業を徐々に始めています。あとはこれまたもう必要ないと思われる食器を漂白して収納したり、襟布や枕カバー外して洗濯したり といったことを日々のお客さん(毎日だいたい10名前後)の接客や 日常業務をこなしながら徐々にやっていくわけです。今日は(最近ずっと?)つまんないけどこんなところで。
私のパソコンが調子悪くて液晶が点灯しなくなったんですよ、一週間ほど前から。だから画面に光を当てて覗き込むようにしながらの入力で疲れるんですよ、すいませんね。
9/9 また来ましたね、台風が。8月20日頃の11号に引き続き今回も大型で動きの遅い台風です。今日は明け方こそは晴れていたものの、あとはずっと霧雨と時折20mを越す強風です。これからあと二日は荒れ模様が続くようだしさすがに客は来るまいと3名の従業員は談話室でゴロゴロとさせていただいてます。たまにはいいよね。
と思ったら夕方になってお客さんが来ました。それも 涸沢からキレットを越えて・・・。よくやるわ、こんな天気にと思いながらも当の本人達は楽しそうに自炊をしています。そういえば私がまだ槍沢にいたころに台風前の大雨のなか北穂からキレットを越えて来たときに「よくやるわ・・・」と言われたことがあったっけ。ともかくせっかく談話室でTVでも見ながらゴロゴロするはずだったのになあ。 ま、明日は無事に下山してください。  
9/10 関東甲信各地で台風の被害が拡がっているようです。幸いこの付近は雨もたいしたことなく、風も風向きの影響でひところよりは収まってます。先ほどのニュースでは長野県から関東方面に向かうJR・高速道路・国道はどこも通行止めだそうで、「東京に行くには新潟わまりで行くよう」などと言ってました。 どうやら台風からの雨雲は関東山地にぶつかって雨を降らしているので北アルプス方面には湿った空気の流入が少ないおかげのようです。でもさすがに今日はこの小屋にはひとっこひとり通りませんでした。
今夜からは明日の朝にかけてはこの地域も暴風域に入りそうです。心配ながらもどれくらい風がふくのかちょっと楽しみです。確か小学生の頃も台風が来ると「学校が休みになるかなあ・・・」ってワクワクしてものですが、そんな感じでしょうか。


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