南岳小屋・管理人の日本最高所のオンライン日記


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2001年8月11日(土)〜20日(月)

日付 今日の出来事
8/11 いよいよお盆休みのスタートです。まだ稜線の小屋はそれほどの人出はありませんが、明日にはこの近辺も混みあうことでしょう。その登山者を歓迎するかのように小屋前のお花畑は花盛りを迎えています。南岳周辺ははもともと周氷河地形の影響で礫(大きな岩)が多く、植物は育ちにくいのですが、 それでもわずかな砂地には数多くの高山植物が咲き競っています。特に小屋の信州側の斜面にはウサギギクやイワギキョウが真っ盛りで、トウヤクリンドウも咲き始めていますし、3年前に移植したコマクサも2株が根付いていて、数輪の花を咲かせています。 また、ここは雷鳥の餌場にもなっているようで、昨日はヒナを連れた雷鳥も懸命に花をついばんでいました。
8/12 他の都道府県はどうだか知りませんが(少なくとも関西にはありませんでした)、長野県では7・8月の両月に限り「山の天気」という予報が出ます。南・北・中アのほか志賀高原や八ヶ岳などの約20ヶ所ほどの山域の予報がNHKの夕方のニュース時に流れます。これらの予報は北アルプス南部地区の場合は豊科警察→涸沢常駐→各小屋へと遭対無線で連絡されるのですが、 なにしろ夕方の忙しい時間帯なもので以前はこの無線連絡を聞き逃すことが多かったものです。しかし 昨年から槍岳山荘に気象協会の観測機器を設置している関係で、毎日午後5時半頃にメールでこの予報が配信されるようになりました、便利になったものです。とはいえ夕方の忙しい時間にいちいちPCを起動して、メール受信という作業はこれまた面倒くさいので気象協会にお願いして私個人の携帯アドレスに送ってもらうことにしています。 それならば受付にいながらにして(但し、小屋内は圏外なので外部アンテナを設置して受付までケーブルを引いています)予報を受信できるようにしました。まったくべんりなものです。それに悪天時はネットで天気図を取ってプリントアウトも出来るようになりました。ということで夏のシーズン中は最新のこまかな予報が小屋内に掲示されていますのでぜひ参考にしていただきたいと思います。
8/13 「夏空復活うぅぅぅッ!!」って感じです。いやいや、6日以来ぐづついた天気でしたが、ようやく夏空が戻ってきました。やっぱり天気がいいのはいいですね、布団も干せるし、小屋内の雑巾がけもできる、窓も開け放って掃除が出来る、小屋の中も乾燥するし、掃除の後には外で笠ヶ岳を眺めながらお茶もできる。やっぱり夏はこうでなくっちゃって天気が戻ってきました。 それに合わすかのようにお客さんもたくさん来たし、今日は小屋泊まりとテント泊を合わせると約150名の人がこの小屋付近にいるわけです。こういうのが毎日続くと大変ですが、やっぱりたまにはいいもんですね、賑やかで。今日は夕焼けの時間にちょっと高台に登ってこれらの賑わいを眺めてました、「ん〜、いいもんだ」って。これだけの人がこんなとこまではるばる来てくれるなんて・・・。 明日からも天気がいいといいですね。
8/14 今日、弊社の会長が来ました。穂苅貞雄というちょっと有名な山岳写真家なのですが、今年80歳と先日の北穂の小山さんに続いて元気なおじいちゃんです。さすがに三脚やレンズなど総重量30kgを越すような荷物なので助手をつけての山行ですが、今年に入ってもう5回は槍まで来て写真を撮っています。 それ以外に松本にいるときでも天気のいい朝は毎日4時にどこか写真を撮りに出かけるというまったく元気なおじいちゃんです。 今日は午後の激しい夕立のあとに良い夕焼けが撮れたようで上機嫌で夕食を食べておりました。 ぜひ再来年のカレンダーには(来年の原稿はもう出来ているので)南岳からの写真も一枚加えてもらいたいものです。      P.S. だいぶ疲れてきました。ハァ〜・・・。
8/15 昨日・今日と午後から激しい雷雨になっています。特に今日は13時前にデカイのが一発落ちました。まだ雨は降ってなかったのですが、あたりが暗くなってきたなぁと思ってたらいきなりです。 ちょうどパソコンで次回のヘリ荷上げの注文リストを作ってる最中だったのですが、ピカッと光ったかと思うとド〜ンと音が来る前にインバーター(昼間は風力と太陽光の発電なので、バッテリーの電気を12Vから交流100Vに変換するための装置)の保護装置が作動して通電をシャットアウトしてくれたのですが間に合わずに蛍光灯の配線が一箇所焼き切れました。「あっ!!パソコン(私物です)が・・・」でもどうやらパソコンは無事でした。 おかげで今夜も更新できてます。それはそうと今日もキレットで遭難事故があったようです。詳細はまだわからないのですが、ヘリの出動を要するような事故はこれで今シーズン4件目となりました。例年ですと一件あるかないかなのですが、やはり今年は事故が多いようです。ちょうど直前に遭対協・常駐隊の小林君(中の湯温泉の息子さん)がここで休憩していて、そのあと涸沢へ向かったので彼らが出動したと思うのですが、ここで「どう、小林君は現場を経験した? まだだったら一度は経験しておきたいでしょう」と冗談で話しをしていた矢先のことでした。あの激しい雷雨の中で救助活動をしていたかと思うとまったくご苦労なことです。 何度も繰り返しますが、皆さん本当に気をつけてくださいね。
8/16 南岳小屋では朝食を5時半に提供しています。一応、夏のご来光が5時前後なので、それを見てから朝食というふうに考えての時間なんです。だいたいどこの小屋も5時〜6時の間と思うのですが、お客さんの中(決して少数ではない)には「エッ5時半!遅いわぁ!!」という方がいます。確かに登山は早出早着の行動が基本ですが、5時半の朝食で「遅いわぁ!!」と言われたのではひとたまりもありません。そういう方はだいたい「4時か4時半には出て行きたい」と言うのです。そりゃ確かにその方々が何時に行動をしようが勝手なのですが、その自分の尺度にあわせて「遅いわぁ!!」と言われると大変です。 それにだいたい4時なんていうとまだ真っ暗だし、そんな中をヘッドランプをつけながらキレットに行くのかよう・・・、と思ってしまいます。かと思えば写真を撮りに行って7時頃まで戻ってこないお客さんもいるし、「朝はゆっくりしたいわぁ」という人もいるし、ホントに大変です。    スイマセン、今日は疲れてるので愚痴になってしまいました。
8/17 お盆休みも過ぎて周辺各山小屋も遠足のシーズンとなりました。遠足とは文字通りアルバイトなどがどこか他の山小屋などへ遊びに行くのですが、南岳の場合は槍や殺生・北穂などから遊びに来ます。 今日も槍の遠足組と槍と槍平の去年のバイト(今年は居候)が遊びに来ました。実際のところはようやくお客さんも減ってきてゆっくりしたい時期なのですがそれはお互いさまということで昼飯を食わせてやったり、土産を持たせてやったり、帰りにはロケット花火を打ち込んだりして歓迎してやるのです。 私も槍沢担当の頃はよく西岳ヒュッテまで生ビールを頂きにいったものですし、昨年は南岳勤務になってから初めてキレットを越えて北穂まで遊びに行かせていただきました。そう、お客さんには「キレットはどうだ、こうだ」と偉そうに言っておきながら実は長らく行ったことはなかったのでした。いえ、道直しなどで長谷川ピークまではしょっちゅう行ってるし、槍沢にいた頃はよく北穂へは遊びに行ってたんですよ。でもいざ近くになるとなかなか行かないもんなんですよ。
8/18 南岳小屋とは直接関係ないのですが、昨日(金)は槍沢で・明日(日)は槍岳山荘でフルートコンサートが行われます。今年で確か、11回か12回目になります。松本市に住む桂綾子・聡子姉妹(双子のフルート奏者ということでテレビなどにも時々出演されているプロ奏者)が夕食後の午後7時頃から約1時間クラシックの名曲や山の歌などを演奏します。山旅に付加価値を付けようと始めたこの試みもすっかり定着してこのコンサートを聞きたくて来られるお客さんもいると聞きます。 華麗な衣装で演奏するのでヘリで登って来ているのかと勘違いされるお客さんも多いのですが、もちろんこの姉妹も歩いて槍まで登るわけでして、さすがに登ってきた当日に演奏というのは呼吸が厳しいので一日置いての演奏会となるわけですが、それでもやはり空気の薄い3000mでのフルート演奏ってのは相当にキツイものだと思いますよ。 最近では槍ヶ岳以外でも演奏会や写真教室・絵画教室etc・・・行事を行っている山小屋も多いはずです。ぜひそういう山の思い出にアクセントをつけるような行事を狙って山に登ってみるのも良いのではないでしょうか。
8/19 今日は好評の「色々なお客さん」シリーズです。このHPをご覧の方なら「大キレット」というものがどういうものかは十分にご存知でしょう。この小屋は大キレットを眺めるためにある小屋のようなものですからね。でも、今日お泊りのお客さんに「大キレット・大キレットっていろいろな写真が貼ってあるけど大キレットってなんですか?」と聞かれてしまいました。ま、その方は槍から来て明日は新穂高に下山するので、“まあそういう人も来るわな・・・”と思いながら親切丁寧に説明してあげました。ところが、夕食時にその話しを他の従業員にすると今日はもっとスゴイ人がいたらしい。小屋に到着したお客さんが北穂から来た方だったので「キレットは大変でしたか?」と聞いたら「キレットってなんだ??」と返されたそうです。 ホントにまったくいろんな人がくるものです。
8/20 今日の日記は「台風ダイジェスト」だな。そう考えながら昨夜は眠りに着きましたが、今朝起きてみたら「ア〜ラ、いい天気!!」 ということで台風ダイジェストは順延になりました。  しかし、さすがに台風直前は変わった気象条件になると言われる通り、その好天ぶりは半端ではありませんでした。まず夜明け前の見事なまでの朝焼け。そしてどこまでも透き通った大気。松本平から南には諏訪盆地から甲府盆地そして富士山の裾野まで、東は佐久平から関東平野を越えて日光連山までと標高1600mのラインで見事なまでの雲海が広がっていました。さながら、南極の氷が溶けて海面が1600m上昇すればこんな感じなんだろうなあという感じです。 しかも今日は山岳遠望を趣味とする私に新しい発見がありました。これも台風直前の異常なまでに澄んだ大気の成せる技というものでしょうか。志賀高原の渋峠の上に変わった二峰の山が「アレは尾瀬の燧ケ岳?」と思い、小屋に帰り地図で確認すればまさに方向はドンピシャ!! ほんの山頂部の30〜40mほどですが、はっきりと紫安グラとマナイタグラ(スイマセン漢字デマセン)とわかる峰が見えました。(但し肉眼では見えません、双眼鏡使用です)その他にも上州武尊山のゴツゴツした山並みなんかも見えて、今日は至上の幸福感にいっぱいでした。さらに夕方には夕照に輝く南アルプスがその山肌の凹凸を見事に浮かび上がらせていましたし、シラビソ峠のホテル(らしきもの)も見えました。どうなんでしょう、私はあまり南アルプス南部の方は詳しくないのですが、シラビソ峠から北アルプスって見えましたか。 ともかく今日は一日中ガスが沸くこともなく、まるで秋のようなあるいは秋以上の山岳展望を楽しませていただきました。これだから山での仕事はやめられません。
スイマセン、今日はかなりマニアックでしたね。


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