8月26日(水)


先日くだらないことを書いた天罰でしょうか・・・

常駐隊の解隊式が行われるまさに当日、遭難現場への出動となってしまいました。

遭難者は長谷川ピークから転落したにも関わらず、スリ傷と軽い打撲程度の軽傷で済み、南岳と北穂の小屋から隊員(小屋スタッフですけど)が到着して現場へ降下準備をしているうちにヘリが飛んできて素早くピックアップしてくれたので「めでたし、めでたし」で一件落着となりました。

問題はこの遭難者の同行者のその後です。

遭難者はキレット3回目の59歳、同行者は誘われてキレット初挑戦の70歳。
遭難者は無事にヘリで松本市内の病院に搬送されたからいいものの、
同行者は気が動転しているにも関わらず、自力で歩いて下山しなけりゃいけません。

「それでは気を付けて!」とほったらかしにするわけにもいかず、
とりあえず一緒に小屋へ戻って、その後は・・・

警察・病院・所属山岳会などなど
通話料の高い衛星電話で連絡をとらなきゃいけないし、
遭難すると警察には家族構成やら仕事やら登山経験だとか計画に無理がなかったか
保険は?計画書の提出は?なんで転落したのか?どういう状況だった?
といろいろと事情聴取をされます。

まあ、今回は軽傷で済んだのでよかったですが、これが死亡事故だったりすると沈痛な心境の中、電話口で聞いているとこっちもかわいそうになるくらい色々聞かれたりします。
言い方は悪いですが、まるで犯罪をおかしたかのように聴取されます。
 (警察行政的に必要なことだとは分かってるんですけど)

悪いことは言いません、遭難なんてするもんじゃないです。
一瞬の不注意がとんだ事態を招く典型的な事例です。

それともうひとつ小屋からのお願いがあります。



これがその遭難者の昨夜の宿泊カード。
現場を通りかかった人から北穂→警察と連絡があり、住所氏名を確認したいということで
カードを探してみたらこんなひどい記入でした。

これを見過ごしてしまったのは私です。
昨日は忙しく、ちょうど受付が立て混んでいる時間だったので気が付きませんでした。

宿泊カードをなんのために書いてもらうか?
一番はこういう事態の時のためです。
遭難者の家族と迅速に連絡が取れるかどうかはこの記述にかかっています。

あるいは、
「山に行っているウチの主人から連絡がないんですが、そちらに泊まってませんか?」
なんて問い合わせも結構多いです。

警察からも行方不明の登山者の足取り追跡の照会も多々あります。

ここで記入が不完全であれば、
実際には泊まっていても「いやあ、いらっしゃらないですね」と答えるしかありません。

今日は現場で北穂の人と話をしたら
「ウチは全員完全記入は義務付けてますよ」とのことでした。
こういう場所にある小屋ですから、それが当然かもしれません。

このHPを見た人はこれからは自分自身のためにも
山小屋での宿泊カードの記入には完璧を期していただきたいと思います。

何人ものグループで書くのが面倒なら計画書のコピーを添えてもらうのもいいでしょう。
こちらも不要な個人情報はある程度日数が経過すれば破棄しますので。

それとテント届は「代表者の氏名・住所」しか記入欄がないですから
やはりこちらも計画書のコピーなんか添えてもらうと助かります。

「俺は絶対に遭難なんかしないから!」
そういう自信のある人は別に構わないんですけど。



なにはともあれ、「軽い事故でよかったよかった。」
そんな話を同行の人と交わしながら南岳に戻ってきました。

偶然かもしれませんが、長谷川ピークのテッペンで昨年9月に飛騨泣きで滑落して死亡した登山者の仲間達が慰霊登山に来ているのとすれ違いました。

「線香と花を持って来たよ・・・」
そんなキレット歩きを仲間にはさせたくないでしょ。