なぜ塗装するの? (塗装の目的)
1 基本的な働きは次の2つです。
@被塗物の保護 ・・・雨風・紫外線などの気象条件や外圧から建物を守り寿命を伸ばします。
A美装性・・・・・・・・・・色・つや・模様・肉厚感など で建物を美しくします。
2 その他の働き (高機能塗料又は特殊機能塗料ともいわれます)
居住環境を改善して快適な生活を作ります。
●超耐侯性塗料
・一般塗料に比べ機能が極めて長持ちし塗り替え周期を延長します
・フッ素樹脂塗料とシリコン樹脂塗料が超耐候性塗料の代表格で超高層ビルや明石海峡大橋などにも用いられています。
●低汚染塗料
・汚れが付き難く美しさが長続きする塗料です。
・塗料を低帯電性にして大気中の排気ガスや粉塵を付き難くする。
・塗料に超親水性(水となじむ)を持たせて汚れを雨水で洗い流す。(セルフクリーニング塗料)
・酸化チタンに紫外線をあて光触媒作用により汚れを炭酸ガスや水に分解して消滅させる方法。
・上記の併用
●断熱塗料
・外気温を伝わり難くします
・熱伝導率の低い塗料で寒暖の外気温を伝わり難くします。
・燃料費の節約に貢献し、冬の結露を防ぎ湿気による腐食を防ぐ効果もあります。。
●遮熱塗料
・太陽光の赤外線や遠赤外線を反射して塗装面の温度上昇を防ぎます。
・倉庫や動物小屋などの屋根によく使われます。
●抗菌塗料
・院内感染・新型肺炎などの流行で見直されています。
・塗料に含まれる抗菌剤が逐次溶け出して抗菌効果を発揮するもの。
・酸化チタンと紫外線による光触媒効果で活性酸素を発生し抗菌効果を発揮するもの。
●防カビ・防藻塗料
・カビや藻が発生しにくく衛生的できれいです。
・薬剤の配合又は酸化チタンと紫外線による活性酸素で微生物の生育を妨害します。
●透湿性塗料
・塗料に通気性を持たせ室内の湿度を調整し、結露を防ぎ腐食から建物を守る効果があります。
・防水性塗料を使用すれば外部からの雨は防ぎ,内部からの湿気は排出します。
●弾性塗料
・ゴム質塗料が壁のひび割れ(クラック)に追随し、雨水の浸入を抑えます。
●多彩模様塗料
・複数の色が斑点模様で混在し高級なデザインや日本調の和壁模様などが塗装できます。
・耐久性が充分でなく屋内での使用が主体です。
●石材調塗料
・御影石や大理石など高級な天然の石材模様を塗料で作り出します。
・石を積んだように(石積風)見せる 「石積目地」「石割目地」などの工法もあります。
※ 上記の各種塗料には寿命があります。
建物の保護機能や美観その他塗料の働きは逐次低下します。 効果を維持するには塗料の種類に応じ一定期間ごとのメンテナンスが必要となります。
塗料の種類
種類は非常に多いのですが最近の代表例を挙げると次のようなものがあります。
塗料名 | 適用素地 | 性 質 | つや維持年数 塗替え目途 |
アクリル樹脂塗料 | 金属系 セメント系 |
耐久性・耐候性などは普通ですが,経済性の面で多用されています。 | 2 - 3年 6 - 7年 |
ウレタン樹脂 | 木質系 金属系 セメント系 |
光沢保持率・耐水性、耐候性などはアクリルよりは良く一般的です。 |
5 - 6年 9 -10年 |
シリコン樹脂塗料 | 金属系 セメント系 |
光沢保持率・耐水性・非変色性・耐候性など塗膜性能は非常に優れています。 | 8 ― 9年 13-15年 |
フッ素樹脂塗料 | 金属系 セメント系 |
・耐候性・耐久性・光沢保持率・駆体の保護性能などは抜群に優れています。 ・超高層ビルの外壁塗装の中心です. |
10-12年 15-20年 |
合成樹脂エマルションペイント | 木質系 セメント系 |
・高肉持ち感 |
普通 5 - 6年 |
エポキシ樹脂塗料 | 金属系 セメント系 |
・耐候性・耐久性以外は優れています。 ・耐水性(水タンク内など)に優れ・耐薬品性は抜群です。 |
長期防食塗装に使用 |
光触媒塗料 | セメント系 | 汚れにくさ抜群・高耐久性に優れている。 | 15年 |
※ 光沢(つや)は塗装直後では塗料の種類に関係なくどれも変りません。年月の経過と共に歴然と差が現れます。
工事を依頼時は見積書でメーカー名と規格などを確認し工事に際しては缶で品名を確認します。
素地の種類に応ずる塗装
1,セメント系下地(モルタル・ALC・石こうボードその他)への塗装
セメント系下地は@アルカリ性があることA吸水性があることB水分を含んでいることに特徴があります。
したがってセメント系下地への塗装はこれらの影響を最少にするよう注意が必要です。
下地の素地調整
・吸込み止めとアルカリの涌出を防止するために密着力が強い塗材のシーラーがよく用いられます。 これにより塗料の厚さムラ、色ムラ、つやムラをなくし、中塗り・上塗り塗料への付着性を向上しています。
下塗り
セメント系下地では吸込みが激しいのでこれを防止するため多くの場合下地処理と同様の材料を使います。
中塗り
下塗りと上塗りの間にあって相互に密着するよう付着力を与え、上塗りより安価な塗料で膜の厚さを稼ぎ耐久性を強化させます。
上塗り
耐侯性や耐摩擦性・耐熱性・遮熱性っ・抗菌性などの予期する機能を与えることと色・模様などで美観を持たせます。
2,木材塗装
木材塗装も風雨や紫外線による保護機能と美観が目的ですが、防腐性・発水性・防カビ(藻)性などの機能も必要です。
木材は木目などにより表面が多孔質なので塗装しないと水分が浸透し、腐食しやすく寿命が短くなります。
木には水分が含まれていて,外気の温度や湿度の変化で吸収・放出(呼吸)を繰返します。
このため塗装がこの呼吸を阻害しないよう配慮されていますが、一般に塗料の寿命は短く、一定期間ごとに塗替えが必要になります。
塗装方法には、塗料を木に浸透させる浸透形(素地着色)と木部の上に塗膜を作る塗膜形(塗膜着色)があります。
(1)浸透形(素地着色)
特徴
木目の美しさを生かせるため木材塗装の多くはこの浸透形(透明着色・・クリヤー)塗料を使用し次のような特徴があります。
@着色していますが年輪や導管など木の持つ美しい模様(木目)を活かすため透明な塗料です.
A木は紫外線で変色して黄変(ヤケ)するので汚くなりますが、塗料がこのヤケを少なくしています。
B塗膜を造らないので木材の保護機能や耐侯性が劣り早期塗替え(4〜5年)が必要となります。メンテナンスに注意が必要です。
別名は拭き取り(オープンポアー)方法とも言われ、木材の表面に塗料を浸透させ、余った塗料を拭き取って仕上げます。
(2)塗膜形(塗膜着色)
特徴
木部の表面が塗料(不透明着色・エナメル)になるので木目の美しさは活かせませんが望みの色を表現でき、膜厚で木が保護されるので浸透形に比べて耐侯性は良く長持ちします。
3,金属への塗装
金属塗装で最も大切なのは素地調整(塗装する前に錆びや油性汚れなどを処置すること)です。
いかに良い塗料でも錆びや油性汚れの上に塗ったのではでは塗料がすぐ落ちてしまいます。又表面にサビ(酸化皮膜)が存在すると静電気的に腐食が加速されると言われます。
素地調整
素地調整は一般にケレン(電動工具と手工具を併用して機械的に削り取る)によります。
このケレンの仕方が金属塗装で最も大切になり、その適否が塗装の寿命に大きく影響します。
塗料がすぐ剥れたなどの苦情はこの素地調整の不備といわれます。
下塗り
下塗りは素地と塗膜を強力に密着させるのが役割ですが,一般に錆び止めが下塗りに使われます。
中塗り
下塗りと上塗りの間にあって相互に密着するよう付着力を与え、上塗りより安価な塗料で膜厚を稼ぎ耐久性を強化させます。
上塗り
耐侯性や耐摩擦性・耐熱性・遮熱性など希望の機能を与え、色彩で美観の機能を持たせます。
塗装工事に当たっては作業工程を良く確認し説明を受ける必要があります。
同じ作業工程でも工事の目的に応じ、又建物の種類や傷み具合などで下地の補修要領が異なります。