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予知夢のメカニズム

【目的】
ブラジルのジュセリーノは、予知夢〔Precognition〕により近未来に起る出来事を数年前あるいは数ヶ月前に予知し、その予言を公証人役場で登録し保存をする。もう一通を予知夢の対象者に対し警告文として送る。そしてその予言の的中率は九十パーセントを超えるという。しかし他方では予知夢を疑問視する声も聞かれる。そこで人間は予知夢により近未来に起こるできごとを事前に予知することは実際に可能であるのか、もし可能であればそこにはどのようなメカニズムが働いているのか等の疑問に対し、さまざまな角度から検討を加えた結果ある一定の結論を得たので、余談を交えながら分かりやすく解説します。

【レム睡眠とナルコレプシー】
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠がある。レム睡眠は一九五三年、アメリカ・シカゴ大学のユージン・アセリンスキーにより発見された。レムという言葉は睡眠中に眼球が素早く動くという意味のRapid Eye Movementの頭文字をとりREMと呼んでいる。脳波は国際脳波学会により、ベーター波(β)、アルファー波(α)、シーター波(θ)、デルター波(δ)の四つの脳波に分類され、β波は一四から三〇ヘルツ、α波は八から一四ヘルツ、θ波は四から八ヘルツ、δ波は〇、四から四ヘルツとなっている。それぞれの脳波は単一にはならず微妙に重なり合っている。目を開けるとβ波になり目を閉じるとα波になる。睡眠は段階を追って進行し四段階に分類される。第一段階の睡眠は、α波は消えて不規則な振幅の小さな波が現れウトウトと眠りかけた状態をいう。第二段階の睡眠は、θ波に加えα波と一二ヘルツから一四ヘルツの紡錘波が断続的に現れ寝息を立てるくらいの睡眠状態をいう。第三段階の睡眠は、深い眠りのデルター波(δ)が現れる。δ波は一九七七年に発見されたDSIP(デルター波睡眠誘発ペプチド)により誘発される。このδ波が脳波全体の二〇パーセントから五〇パーセントを占める状態をいう。第四段階の睡眠は、δ波が脳波全体の五〇パーセント以上を占め熟睡の状態をいう。健常者の睡眠は第一段階から徐々に深い眠りの第四段階にと進行していく、この第一段階から第四段階までをノンレム睡眠と呼ぶ。ノンレム睡眠の時間は九〇分ほどである。入眠から九〇分後にはレム睡眠になる。レム睡眠の時間は一回目が一〇分、二回目は二〇分、三回目は三〇分と徐々に長くなる。レム睡眠の合計は一晩で九〇分ほどになる。レム睡眠の脳波は第一段階の脳波に似ている、しかし第一段階の脳波と違うのは眠っているのに目が激しく左右に動くことである。レム睡眠とノンレムの睡眠の合計は一〇〇分から一二〇分となり、健常者の睡眠は、それを一晩に三回から四回繰り返すのである。レム睡眠は第二段階の眠りの状態に近く刺激を与えてもなかなか目が覚めにくく、無理やり起こすと八〇パーセントの人が夢を見ていたという調査報告もある。レム睡眠は、身体は深い眠りの状態に対し脳は浅い眠りになっている。怖い夢を見た直後に眼を覚まし身体が思うように動かないと殆どの人は金縛りにあったと言う。しかし金縛りは霊的現象ではないのである。脳の視床下部でつくられるオレキシンという神経伝達物質が欠損すると夜間でも頻繁に目が覚めてしまう。また日中は短時間ではあるが猛烈な眠気が繰り返し襲いかかる。ときには瞬間的に眠りに入り突然倒れてしまうこともある。これはナルコレプシー(Narcolepsy)という病気の特徴であり睡眠過程の第一段階から第四段階までスムーズに進行しない、いわゆる睡眠障害の症状である。ナルコレプシーの最初の患者は、一八七七年に診断され、その後一世紀以上も経つ二〇〇〇年にようやくそのメカニズムが明らかになったもので、一般的にはあまり知られていない病名である。ナルコレプシーの発症は思春期に多く見られ、また年齢を重ねてから発症するケースもある。現在では約六〇〇人に一人がナルコレプシーの患者といわれている。オレキシンは睡眠と覚醒のメカニズムに深くかかわっている神経伝達物質であり、オレキシンが欠損すると何かの拍子で簡単に眠りまた簡単に目が覚めてしまう。健常者は眠りに入ると三〇分ほどで深い眠りのノンレム睡眠に入るが、ナルコレプシーの患者は浅い眠りのレム睡眠に入ることが多くなる。ナルコレプシーの患者の髄液を採取し検査をしてみると、九〇パーセント以上の割合でオレキシンが検出されないという。つまりナルコレプシーの患者は健常者よりもレム睡眠が長いので夢を見る時間も必然的に長くなる。そしてオレキシンの欠損により頻繁に目が覚めてしまう。すると夢の直後に目覚める頻度も高くなるので夢の内容を鮮明に記憶していることになる。ナルコレプシーの患者の症状と予知夢は繋がっている。

【シーター波とワームホール】
禅は瞑想をする。瞑想は心頭滅却すれば火もまた涼しいといった没我の境地に達することに意味がある。宝亀五年(七七四)讃岐の国、香川県善通寺市に生まれた真言宗の開祖、空海(幼名は真魚)は七歳のとき世を救う請願を立て全国行脚をした。艱難苦難の末八〇四年に唐の都・長安に渡り、サンスクリット語やインド仏教を学んだ。土佐の国室戸岬では一日一座一〇〇〇〇回の念誦を一〇〇日間夜通し一心不乱に修行をした。真言を一〇〇万回唱えると宇宙の真理に近づくとされる。修行は戒律があり食も厳しく制限される。身体はミイラのごとく痩せ細り、下肢は川辺の鷺の脚のようであった。生理現象の限界は遥かに超えていた。瞑想の修行はふつふつと沸き起こる妄想、邪念、内なる魔物との戦いである。ある晩明星(金星)の光がスイッチとなり眉間にまばゆいばかりの閃光が走った。それから行のときには決まって赤紫色の光が眉間に現れるようになった。そして空海は天眼通の神通力がそなわった。八一六年、空海は時の朝廷に願い出て瞑想の道場としての高野山の地を賜り、三年後「金剛峯寺」を開創した。八二三年、嵯峨天皇に都の安泰祈願のための「東寺」(京都)の造営を命じられた。数々の業績を残した空海は八三五年、高野山奥の院で背筋伸ばした結跏趺座の姿で生きたまま永遠の禅定に入った。その八六年後の九二一年、醍醐天皇は空海の功績を称え「弘法大師」の称号を送った。それから空海は「弘法大師空海」と称され人々に長く愛され現代に至っている。その奥の院は日本でも有数の気場の高いところである。気場の高いところで修行をすると脳波がシーター波になりやすいのだ。また温泉にのんびり浸かっているときなどもシーター波になりやすい、全国行脚の道行きで空海が発見した温泉は日本各地に残っている。龍神温泉(和歌山)、修善寺温泉(静岡)、湯村温泉(山梨、)川場温泉(群馬)、東道後温泉(愛媛)などである。龍神温泉は有吉佐和子の『日高川』の小説の舞台となった紀州の名湯である。日本三大美人の湯とも称される。また長野県の海の口温泉も空海が発見した温泉である。黒く濁った神秘的な源泉がこんこんと湧いている。空海の発見した温泉は他にもある。駿河生まれの日本臨済禅中興の祖である白隠禅師もまた全国行脚をした。信州の飯山では正受老人に参禅し、小悟大悟の末に悟りを開いたとされる。時は宝永五年のことである。また鎌倉時代四国の道後に生まれた一遍上人は、「踊り念仏」で名を馳せた僧侶である。その「踊り念仏」は信濃の国佐久郡から始まった。夏の風物詩、盆踊りは「踊り念仏」の流れをくんでいる。一遍は「捨聖」と呼ばれ衣食住すべてに対し「捨てよ、捨てよ」と説いた。悟りには邪念執着心が邪魔になると説いたのである。中国古来の気功も入静(瞑想)を大切にする。淡白無欲虚無真気これに従うと教示し、欲を捨てて心を無にすれば内気の調和が図られ健康が保たれると説く。ヨガもまた瞑想によりチャクラを開く修行がある。瞑想はさまざまな修行の基本的要素になっている。健康増進を図る、悟りを開く、真の己と向き合う、内なる神や仏に出会う、超能力や霊能力を得るなど目的はさまざまである。空海、一遍上人、白隠禅師など修行者の目的は天眼通の神通力にある、神通力は宇宙の真理に近づく智慧であり人類の求める全ての目的が達成される能力をいう。その神通力、智慧はシーター波の脳波から生まれる。シーター波は一般的なシーター波とFmシーター波と呼ぶものがある。Fmと付くのはFrontal midline(前頭正中線)の頭文字をとったもので大脳新皮質の前頭葉から出る知的脳波ともいわれ、人間らしい精神活動が行われるときに現れる脳波である。このFmシーター波は開眼時でも快感を伴う何かに没頭しているときに現れる。その快感物質とはドーパミンである。脳内のA10神経の神経伝達物質はドーパミンである。神経細胞はその末端にオートレセプター(自己受容体)を設置しドーパミンの放出量を調節している。しかしA10神経の末端になる大脳新皮質の前頭連合野とその近傍だけがオートレセプターが欠落している。オートレセプターが欠落しているとフィードバック機能が働かないので情報は一方向だけに流れ決して逆戻りはしない。前頭連合野ではA10神経は他の部位の二倍ドーパミンを放出している。前頭連合野は人間だけがもつ脳であり、創造的想像力を養い人類の進化を遂げる脳である。そして知的生命の智慧を内包する脳と思われている。超能力者、霊能者、特異効能者、気功師などに共通する現象がある。それは感覚的な表現の違いはあるものの、眉間がもぞもぞする、眉間が押される感じがする、眉間に光が差し込んでくる、眉間に虫が這う感じがする、眉間にトンネルが現れる、眉間が開いた感じがする、眉間に虹色が現れる、眉間に閃光が走るなどである。このような体験をすると眉間のツボ(東洋医学は印堂穴、ヨガはアジナチャクラ)が開き、さまざまな能力を発揮するようになる。約一二〇〇年前の空海、遠隔透視のアメリカ・マクモニーグル、中国の特異効能者、そして気功師もしかりである。その眉間の内側にあるのが前頭連合野の脳である。Fmシーター波は、子供がテレビゲームに熱中している時や好きな絵本を夢中になって読んでいるときなどにも、このFmシーター波が現れる。また大人であってもFmシーター波を出している人はたくさんいる。音楽家や芸術家、スポーツ選手などもFmシーター波を出している。つまり快感を伴う何かに没頭していれば自然とFmシーター波がでるのである。Fmシーター波は小学生、中学生、高校生になるにつれて出やすく、大学生や社会人になると出にくくなる傾向がある。そして老人になるとほとんど出なくなる。Fmシーター波の出る時期は成長期と衰退期があり、Fmシーター波が出なくなることは脳の衰えを意味する。しかし高齢者であっても気功の鍛錬や簡単な脳のトレーニング方法を実践すれば、Fmシーター波を出し続けることは可能である。気功師が外気功や遠隔気功に入ると脳波がスパッとFmシーター波に切り替わる。瞑想によりシーター波の脳波を長時間維持するのは容易なことではない、シーター波は微睡の意識になるので睡魔が襲う。うっかりすると眠りに入ってしまう。禅であれば背中をパシッと叩かれる。瞑想はシーター波を維持する修行になるので己との戦いになる。しかし、ある程度修行を積むと意識も研ぎ澄まされ没我の境地に達する。すると難解な禅問答がパッとひらめくような意識が働いてくる。元大阪帝国大学の政木和三工学博士は六〇〇件以上もの発明をした大発明家でもある。その政木博士もまたシーター波の脳波になるとインスピレーションにより瞬時にアイディアが浮かぶという。またモーツアルトのような優れた作曲家や芸術家などの作品もこのシーター波の脳波から生まれることが多いのである。右脳教育の大切さを説く理由もここにある。シーター波はスイスの精神分析医ユングの提唱した集合的無意識の共時性を包括するので、シーター波の脳波になると偶然の一致現象が頻繁に起きるようになる。瞑想により、シーター波を維持できるようになると、閉じている眼の中に動的な紫色の渦巻状のトンネルが現れる。これをワームホール〔Wormhole〕と呼ぶ。ワームホールは遠く離れた空間と時間の異なる領域を瞬時に結びつける時空の管である。管の円周が空間方向になり、一次元の閉じた空間を表し長い管の方向が時間の方向である。粒子は最短距離を直線的に進むものであるが時空は平坦ではなくゆがんでいるために、ワームホールの中はあたかも曲がりくねったトンネルのように見える。宇宙には重力が非常に強くなり、すべての物質を吸い込み光さえ逃げ出せなくなる時空の領域がある、それをブラックホールと呼ぶ。そのブラックホールは超新星爆発のあとに形成されることがある。高い観測精度をもつハッブル宇宙望遠鏡は、一九九〇年四月二五日にスペースシャトルから宇宙空間に送り出された。そのハッブル宇宙望遠鏡は四五〇〇万年ものかなたにあるNGC四二六一銀河の中心近くで、ブラックホールに毎秒数千キロもの光速で吸い込まれる宇宙ガスを発見した。ブラックホールとは反対に物質が吐き出される時空の領域をホワイトホールと呼ぶ。このブラックホールとホワイトホールをつなぐ時空の管がワームホールである。量子力学では、このワームホールのサイズは、小さければ小さいほど都合がよいという数式になり、限りなく小さくしていくとプランク長さになる。宇宙を閉じた空間と考えると、曲率半径(球面の半径)があまり小さくなると、時間的にさかのぼることに意味がなくなってしまう。その意味がなくなる大きさがプランク長さである。それは普遍的な物理定数のニュートンの重力定数G、相対論の光速c、量子力学のプランク定数hから導かれる長さであり、10-33センチである。一センチの一〇〇〇億分の一の、一〇〇〇億分の一の、一〇〇〇億分の一といった気の遠くなるような小さなものである。素粒子は10-13であるから、素粒子よりも二〇けたも小さい。そしてこのプランク長さは、宇宙の始まりの長さと考えられていて、このような超ミニサイズのワームホールが、宇宙のいたるところに存在し異なる次元のさまざまな宇宙とつながったり離れたりしているというのが量子論である。このような小さな宇宙をベビー宇宙ともいう。アルバート・アインシュタインとネイサン・ローゼンは、一九三五年の論文で当時はブリッジと呼び、いまではワームホールと呼ばれるものを許容していることを示している。つまり量子論はミクロのレベルではタイムトラベルは可能とされているのである。宇宙船ほど大きなものとなるとブラックホールの特異点に突入してしまう、しかし高度の文明ならワームホールを開き続けることが可能かもしれないと述べている。するとUFO(未確認飛行物体)のクルーは地球外知的生命体と考えるべきものかもしれない。福島県にある「飯野町UFOふれあい館」は日本でも有数のUFO資料館である。宇宙人の写真やUFOに関する資料が所狭しと展示されている。アメリカ政府・CIAの極秘文書もある。UFO否定派であっても館を出るころにはすっかりUFO信者になっている。一九七七年の米SF映画「未知との遭遇」公開後、英国内のUFO目撃情報が倍増したことが英国防省の機密文書が明らかにしている。英国の理論宇宙物理学者スティーブン・ホーキングは、二〇〇一年、「ワームホールには気をつけよ。そこから何が出てくるかけっしてわからないのですから」とStephen Hawking The Universe in a Nutshellで語り、やはりワームホーを許容する立場をとっている。オックスフォード大学のロジャー・ペンローズ教授もホーキング博士と並ぶ現代物理学界の至宝である。そのペンローズ博士は「ツイスター理論」という独自の統一論をもっており、意識の問題を量子力学的に解明するという大命題に取り組んでいる。脳波をシーター波にするとワームホールが開く、そのワームホールに意識を進入させると異次元領域にアクセスする。すると宇宙のあらゆる情報が得られる。この時の意識は変性意識と呼ぶもので通常の意識とは異なる。その異次元領域とはどのような所なのか、膨大な宇宙の歴史のすべてを記憶していなければならない、それは超スーパーコンピュータ〔Constellation  System〕のCPUCentral  Processing  Unit〕(中央演算処理装置)やICIntegrated  Circuit(集積回路)のようなものが無限個数必要となる。一九六九年、記憶の宝庫と呼ばれる大脳辺縁系の海馬(ヒポカンパス)で、一度破壊されたシナプス(神経伝達物質)の復活が動物実験により確認された。この発見により記憶の必要に応じ新しい神経回路ができ、その神経回路のシステムが記憶するという仮説が実証された。カナダの脳外科医ウイルダー・ペンフィールド博士は、海馬を電気刺激し患者の過去の記憶を憶い出させることに成功した。それから海馬は記憶の貯蔵庫として注目されるようになった。しかし人間の脳細胞は一五〇億であり体全体の細胞は六〇兆である。もし仮にその細胞一つ一つが超スーパーコンピュータと同等の演算処理能力を持ち合わせていたとしても、一三八億年の宇宙の歴史をつぶさに記憶することなどとても不可能である。それではその異次元領域はどこに存在するのだろか、そこで浮上してくるのが平行宇宙(パラレル・ワールド)である。平行宇宙は一九五七年、ヒュー・エベレットが提唱した「多世界解釈」の理論である。「この世には異なる時空の宇宙が無数に平行して共存する」というものであり、まったくもって奇想天外な話である。しかし平行宇宙の理論は、予知夢や超能力、超常現象など不思議な現象の解明には都合の良い理論である。平行宇宙に変性意識がアクセスすると人類の過去、現在、未来、宇宙の歴史の全てを垣間見ることができる。予知夢の現象はこの平行宇宙を訪れるとなんの矛盾も起こらないのである。一九九九年、ハーバード大学リサ・ランドール教授が発表した論文「ワープ余剰次元モデル」も平行宇宙を想定したものである。修行者が、瞑想、断食、滝打ち、千日苦行などにより精神と肉体を極限まで痛めつけ悟りを開いてきたものを、ナルコレプシーの患者は簡単にその目的を達成してしまう。それは脳の視床下部でつくられるオレキシンという神経伝達物質の欠損により脳波がシーター波になりやすく、自然とその時間も長く保てるからである。つまりナルコレプシーという病気が奏功し無意識に脳波がシーター波になりワームホールが開くからである。しかし予知夢はナルコレプシーの患者だけの特権ではなく、瞑想により脳波をシーター波に導き、ワームホールを開けば誰にでも予知夢は可能になる。このメカニズムをワームホールアクセス効果〔Wormhole  Access  Effect〕と命名し、その頭文字をとり「WAE」と呼ぶことにする。またナルコレプシーの患者に近い体質の持ち主も、瞑想などの修行を積まなくても予知夢は可能になる。もしナルコレプシーの患者が予知夢を見たくなければ睡眠薬を服用すればよい、すると健常者と同様に深い睡眠が得られるので予知夢の頻度はかなり下がる。実際睡眠薬の服用はナルコレプシーの患者の処方でもある。予知夢のほかにも不思議な現象がある。遠隔透視、遠隔気功、超能力、超常現象、心霊現象などである。これらの現象のなかには粒子が光速を超える立場をとらないと説明のつかないものもある。しかしアインシュタインのE=mc2の公式により物質は光速を越えられない。だが光の速さの壁を破ることなく光よりも早く移動する手段がある。それはワームホールである。ワームホールは異なる時間と空間の領域を瞬時に結びつける時空の管である。その時空の管を登山と比喩的に考えると山の中腹にトンネルを掘るようなものである。すると短時間で山の向こう側に到達できる。量子論にはこのように距離の短縮、近道という裏技がある。これを広大な宇宙空間で考えるとワームホールは光よりも早く移動できる手段となる。このワームホールのメカニズムと予知夢は深く関わっている。

【量子力学と多世界解釈】
量子力学は、一九二〇年代にコペンハーゲン解釈により、実用的に完成されたものであり、今日、電子や原子、分子などがかかわるすべてが量子力学にもとづいて考えられている。その基本法則を表す理論は、シュレディンガー、ハイゼンベルク、ファインマンによるものがある。シュレディンガーの理論によれば、一つの電子を波として表す。したがって、一つの電子には無数の歴史があることになる。例えば池の中に石を投げ込むと波が起きる。その波は岸辺に向かって広がる、その波の広がりに無数の穴の開いた板を縦に置くと、その板の穴を通過した波は、あらたに無数の小さな波を生じる。つまり、無数の歴史を持つことになる。波の伝播を無数の小さい波の合成で表す考え方をホイヘンスの原理と呼ぶ。今までに多くの人が量子力学の研究に取り組んできた。なかでもヒュー・エベレットにより提唱された「多世界解釈」は、電子や原子、分子などを扱う量子力学を、原子の集合体である物質、人間、宇宙全体も同じ原理で説明すべきという立場から生まれたものである。つまり、電子のようなミクロの世界だけを対象にするのではなく、観測装置やそれを見ている人間などもまるごとセットにし、量子力学の対象にするというものであり、量子力学の基本原理であるシュレディンガー方程式を発展させた理論である。電子の世界は共存し、互いに干渉しながら移り変わるというが基本である。つまり共存する無数の状態により表されるのが量子力学の基本原理である。一方「多世界解釈」の基本原理(公理)は、「共存度がゼロであれば、その世界は共存していない、共存していないから、電子は観測されない」というものである。コペンハーゲン解釈では、観測者は、共存する中にあるAの位置の電子とBの位置にある電子の外側に立ち、そのどちらかを取り出すというものに対し、「多世界解釈」では、電子がAという位置にある状態の時には、観測者は、Aという位置に観測するし、電子がBという位置にある状態の時には、観測者がBの位置で観測するという、共存する各状態の中に観測者も同時にいるという解釈である。電子と観測者をまるごとセットで考えるのがコペンハーゲン解釈との大きな相違点である。ミクロの世界の電子は、無数の状態が共存し、干渉などにより、互いに影響を及ぼしている。しかし一つの状態から始まったマクロの宇宙では、無数の状態を生み出し、そしてそれらはいくつかの互いに無関係な世界に次第に分かれていく、無関係な世界であるから他の世界からは電子は観測されないし干渉も影響も受けない。そしてそのうちの一つがわれわれの宇宙である。つまり現在の世界からは見えない複数の宇宙が同時進行して存在するという立場をとるのが「多世界解釈」である。それは現在とまったく同じ世界というのではなく異なる時空という意味である。つまり異なる時間の流れの宇宙が無数に存在するという理論である。物理学の究極の理論とされるものに「超ひも理論」(スーパー・ストリング・セオリー)がある。「超ひも理論」は、物質の究極の要素は粒子ではなく超微細な振動しているひもであるという。その究極の理論の目的は、現在ある四つの力、重力、電磁気力、強い力(中性子、陽子を引付、原子核を一まとめにする力)、弱い力(中性子を陽子に変える現象、ベーター崩壊を起こす力)をひとつの力にする大統一論にある。すると宇宙の初期の状態がわかる。この「超ひも理論」は、時空が四次元ではなく一〇次元あるいは二六次元の場合のみ成立するとし、影の物質からなる影の宇宙の存在を許容するものである。宇宙開びゃく後10-44秒(プランク時間)のところで原子の力から重力が分離した。それはいくぶん温度が下がり「超ひも理論」がもつ高い対称性がくずれたことにより起きたもとされている。そしてそのときから実の世界と影の世界が分離し、二つの世界はともに進化を遂げて今日に至っていると「超ひも理論」は語る。つまり、今の世界からは見ることも触ることもできない影の世界の存在を許容する理論である。東洋医学の陰陽五行の理論もまた陰の世界を許容し、それを太極図で表わしている。電磁波の波長は長い方で数キロメートル、短いものでは10-17である。可視光線の平均波長は二〇〇〇万分の一センチ、レントゲン写真のX線の波長は約一億分の一センチというように、人間の目が知覚しうる可視光線はごく限られた領域をしめるにすぎないのだ。人間の目は何もかもが見えているようで、実際のところは宇宙の事象のほんの一部しか見えていないのである。陰の世界と予知夢のメカニズムは繋がっている。

【正夢と予知夢】
夢には正夢というものがある。ドライブで訪れた場所が、数日前の夢に出てきた場所と全く同じであり仰天したとか、明日乗る予定の飛行機がエンジントラブルで落ちる夢を見たので搭乗をキャンセルしたら、その飛行機が本当に墜落事故を起こし、九死に一生を得たというような話はたくさんある。このような正夢を予知夢というのであり、誰もが一度や二度は見ているものである。そして実際にはかなり多くの正夢を見ている可能性がある。なぜなら夢を見ても目を覚ましたときに忘れてしまっていることが多いからである。政木和三博士もあるとき信州の温泉宿で正夢を見たという。生命体が肉体から抜け出し南を目指して飛んでいった。上空から下を見ると小さな丸い島があり、印象的な竜が見えたのでそこに着地した。その三ヵ月後名古屋から東京に向かう電車の中で同行の知人にその夢の話をしたら、不思議ですね、その話は今右に見えている竹島とそっくりですと言われた。そこで東京からの帰りに蒲郡市の竹島を訪れた。するとそのとき記憶に焼き付いた風景と寸分違わぬ風景があった。そしてその竹島は竜にまつわる伝説のある島であることも分かったという。また政木博士は昭和天皇崩御の一月七日という日時を一ヵ月半前に予言をし、講演会のたびごとに聴衆に話しをしていた。そして脳波をシーター波にすると一年間という時間のスパンが三〇〇分の一秒に短縮されるという、だから三〇〇〇分の一秒後(四五日後)に起きるできごとを事前に予知してもなんら不思議なことではないと述べている。道後の一遍上人は文永八年(一二七二)春に信濃国善光寺に参詣するが、秘仏である善光寺如来は拝観できなかった。しかし会いたさ見たさの強い念に駆られ幾夜も熱心に参籠していると、夢か幻か現実かといったもうろうとした意識の中で善光寺如来を目の当たりに拝むことができたと『一遍聖絵』は伝えている。このときの意識もシーター波であり日本史に残る最古の遠隔透視、予知夢の事例と言えるものである。世界最大の海難事故は、一九一二年四月に発生した。有名なタイタニック号事件である。絶対に沈没しないとされていた豪華客船が大西洋の北方航路で氷山に激突し沈没した事件である。その事件は、それより一四年前の一八九八年に発表されたモーガン・ロバートソンの小説「タイタン号遭難」と細部にわたり同じであった。大きく早くて豪華な客船、四月に処女航海に出る、富の代表のような客が乗船している、大西洋の北方航路で氷山に激突して沈没する、乗員客数、救命ボートの数、衝突時の速度、排水トン数、船の全長、プロペラ数などほとんどが一致していたのだ。超心理学会はのちに小説「タイタン号遭難」は、人間の無意識の予知を虚構の世界で再現したもっとも見事な例であるとコメントしている。予知夢により、これから先に起きる事故や災難を事前に回避できれば幸運である。もし人類の全ての人に聞き取り調査が可能であれば、人類の数ほど予知夢の体験談が集まるものと推測できる。それほど予知夢はポピュラーなものである。

【補足】
サンディエゴ州立大学のF A・ウルフ教授は、「世界は潜在的なものであり、それを観測する人間がいなければ存在しないものである。世界はわれわれ一人一人がそれを観測するたびに突然、実質的な存在になる。もしこのような宇宙象を受け入れるならば、いままで神秘的と思われてきた多くの出来事が理解できる」と述べる。「われわれが見たり聞いたり触ったりすることのできる世界を実在の世界という。実在には二種類ある、そのひとつは『外のそこ』であり自分以外の外で起きるできごとである。花が咲く木の葉が落ちる雪が積もるなど五感で認識できる世界のことである。これを物理学者は『外のそこ』と語る。もうひとつの実在は、こころの世界である。夢や思想、表徴などであり、心理学者は『内のここ』と呼ぶ。そして『外のそこ』と『内のここ』には直接の連携あるいは対応がある」とウルフ教授は語る。また量子力学では第三の実在が存在する。この第三の実在は『外のそこ』の実在と『内のここ』の実在の両方の性質を持っているので、心の世界と物質世界の架け橋となる。また内と外の両者の属性を兼ね備えているので逆説的で魔法のような存在でもある。この第三の実在は因果律が厳密に成り立っている。つまり原因・結果の法則が働いているのである。しかし因果律に従っているのは物質ではなく亡霊のような存在であるという。亡霊は同時刻に複数の場所に現れる。この亡霊のような存在を量子力学では波動関数と呼ぶ、関数とつくのは何かに依存すからである。その何かとは時間、空間のことであり時空と呼ぶ。アメリカのバージニア州にあるモンロー研究所は幽体離脱体験のできる施設である。創設者のロバート・モンローは四二歳のときに幽体離脱体験をし、それ以来約三〇年間離脱を繰り返した。そしてその離脱のなかから思わぬ効果が明らかになった。それはあきらかに予知と呼べるものであった。そのロバート・モンローの脳波のパターンをデーターベース化し一九七一年に完成したのがヘミシングという装置である。五ヘルツほどの異なる周波数の音を左右の耳から聞かせる。すると脳波がシーター波なる。この音響効果を利用すると一般の人でも離脱体験ができる。そして離脱の領域をフォーカスと呼び一から三五まである。フォーカスは三次元領域、物質界想念反射層、信念体系領域、輪廻転生地点などがあり、二八から三四までは実在の領域である。そして最高のレベルはフォーカス三五になっている。この番号の付いた領域を幾日もかけてステップアップしていくと、やがて離脱ができるというものである。不思議研究家の森田健氏はそのモンロー研究所に約一ヶ月間滞在し幽体離脱の体験をしたという。壁の中に掘られた洞窟のようなベッドの中に入り、ヘッドホンでミキシング音を聞いて半覚醒状態に入る。コントロール・ルームから英語のガイダンスが流れてくる。あなたの意識は肉体の支配をはるかに超えてだんだん広がっていきます‥‥しかし一週間の入門コースでは二四名の外国人の参加者全員が離脱できなかった。そこでつぎのライフラインのコースを受けた。そこでも離脱できなくて諦めかけていた時だった。急に肉体の感覚が無くなりベッドの上に浮いていた。そこで自宅(日本)への飛躍を意識したら次の瞬間自宅にいた。自分のベッドに娘が寝ている姿が見えた。(国際電話で確認)声をかけたが聞こえなかった。そこで触ろうとしたらその手は体を突き抜けてしまった。つぎにフェルル(愛犬)の寝顔を覗き込むと目を開け自分の動く方向を目で追っていた。フェルルには自分の姿が見えているようだった。そのとき自宅の時計を見たら二三時三七分だった。時差を考えると一時間ほど過去の日本にやってきたことになる。他の離脱体験者もみな同じようなことを言う。そしてフォーカス三五では本当の自分と遭遇したと森田氏は自書「不思議の科学」で語っている。この森田氏の離脱体験は量子力学の第三の実在と呼ぶものである。『自分のここ』で『外のそこ』を見たのである。このとき森田氏はモンロー研究所と自宅の二箇所に実在した。自宅では亡霊のごとく愛犬フェルルの前に現れた。もし離脱のときに複数の場所を意識すると、その意識した複数の場所にも同時に実在する。しかしボーアの相補性原理により、実在は認識されるまでは実在にはならない。つまり複数の人が複数の場所で認識して、はじめて複数の実在となるのだ。ノーベル博士のド・ブロイは、一九二三年に物質は光と同様に二重性を持つことを発見した。ド・ブロイ波は、どんな粒子にもついてまわる。これを波動・粒子の二重性という。粒子は波のように広がりをもっているのである。森田氏の愛犬フェルルを代弁すると「ご主人様は一ヶ月の出張と言われたのにもう帰られたのですか、でも何だか変だなぁ、顔の表情もいつもと違うし半透明人間のように見える。まるで亡霊みたいだなぁ、あれっ空中にスーッと消えちゃった」とフェルルは思ったに違いない。そのとき家族の者も目を覚ましていたら、やはり森田氏の亡霊を見たであろう。これは俗にいう「夢枕に立つ」現象である。もし近親者が夢枕に立ったならば、自分に会いに来てくれたのだと思い笑顔で別れを告げればよいのだ。そうすれば言葉は通じないけれど笑顔は見えているので安心する。また手話で思いを伝えることもできる。もちろん相手も手話を理解できることが条件だ。写真に収めると壁や人物の背景にぼやけて写る、ぼやけるのは実像ではなく波動であるからだ。それは一般的に心霊写真と呼ぶものである。中国のR氏は警察病院に勤務し瀕死の患者の心臓に気を送る仕事をしている。あるとき森田氏はそのR氏の元を訪れ特異効能の実演依頼をした。その実演は木の葉の再生と縮小というものであった。森田氏はマサキという種類の木の葉を四つにちぎりR氏にわたした。R氏は木の葉の断片を掌に置いて握った。そしてパワーを何度も送るしぐさをした。数分後に開いた掌には豆粒のような小さい木の葉があった。その重さと長さを測ってみると両方とも五十分の一になっていた。顕微鏡を覗くと細胞も五〇分の一に縮小していた。植物学者によれば地球の重力の影響により、動植物の細胞は皆同じ大きさであるはずだという。特異効能により木の葉の細胞が縮小したという現象は、地球とは異なる時空・重力の存在の証である。同じく中国のS氏もまた煎った豆などの蘇生ができる特異効能者である。一〇数年前、日本の科学者に同行し中国人体科学院を訪れS氏とS氏の指導教官の沈教授と意見交換をした。そのときにはごく普通の女性に見えた。ところがS氏はさまざまな不思議な現象を起こす超能力者的存在であった。森田氏もこのS氏を何度も訪れて特異効能の取材と実演を依頼している。S氏がはじめて蘇生に成功したのは一九九八年のことであった。一匹の茹でたエビを蘇生させたのである。また踏み潰されて内蔵も飛び出してしまった一羽のヒヨコの蘇生にも成功している。つまり一度死んだエビもヒヨコも生き返ったのである。にわかには信じられない、こんな話は誰も信じない、明らかに科学の常識を逸脱している。しかしこの蘇生は紛れもない事実である。厳重な監視下のもとでの再現性があるのだ。どんなに不思議な現象であってもそこに理論と再現性があれば科学になる。中国地質大学教授の沈今川博士はS氏にこのような実験を指示し、さまざまな奇跡を起こさせている。しかし、そのメカニズムについてはS氏も沈教授も解明にはいたっていない。この蘇生も本邦初公開のWormhole Access EffectWAE)の理論で説明がつくのである。 

【結論】
人間は予知夢により、近未来に起きるできごとを事前に予知することは可能である。予知夢は特別なものではなく正夢として誰もが一度や二度は見ているものである。予知夢のメカニズムは、シーター波とワームホールと平行宇宙が三位一体となっている。平行宇宙の時間の進行している領域に変性意識がアクセスすると未来を覗くことができる。これを予知という。政木和三博士の体験がそれにあたる。また時間の遅延する平行宇宙に変性意識がアクセスすると人類の過去の歴史が見える。これを過去知と呼ぶ。これは森田健氏がモンロー研究所で体験している。これらの現象をワームホールアクセス効果〔Wormhole  Access  Effect〕と命名し、その頭文字をとりWAEと呼ぶのは前章でも述べた。予知はナルコレプシーの患者のように自然と身についてしまうものと、瞑想などにより脳波をシーター波に下げることによってその能力を発揮するものがある。空海の神通力はそれにあたる。どちらにしても予知夢の本質はシーター波の脳波にある。脳波がシーター波になるとWAEの理論により予知や過去知が可能になる。ブラジルのジュセリーノはアメリカの同時テロ事件をはじめスマトラ沖大地震など八万件もの予知をしている。このジュセリーノの予知夢やアメリカ・マクモニーグルFBI超能力捜査官の遠隔透視もWAEの理論で十分説明がつく。冷戦時代、米、ソ(現ロシア)の両国が巨額の国家予算を投じ超能力の研究をしてきた。今まで不思議な現象と思われてきた予知能力、特異効能、遠隔気功、心霊現象、超常現象、念力、超能力(テレパシー・テレポーション含)など人間の意識がもたらす事象のほとんどが、このWAEの理論で説明がつくのである。今後は誰もが使える一般的能力になる。それは知的生命体の能力と呼ぶにふさわしいものになる。そして、このWAEは環境破壊の地球を救うこともできる。SF小説が現実のものとなる日も近いのである。WAEは人生のもっとも深遠な経験となり、体験者の信念を根本的に変えることになる。ノーベル物理学者のユージン・ウイグナー博士は、「われわれの意識が世界を変える、なぜならわれわれが未来をどう見るかはわれわれの意識しだいだからだ」と述べている。

 

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