知らなくても充分楽しめますが、知っていると一緒にいった人達にチョット自慢?出来る『美ヶ原高原雑学』あれこれを
 まとめました。
【 美ヶ原高原は日本百名山 】               
 北は北海道の利尻岳(1,719m)から南は屋久島の宮ノ浦岳(1,935m)まで名峰百座を綴った『日本百名山』(深田久弥著:
 新潮文庫刊)の61番目に記されているのが、美ヶ原高原です。
 文章から、著者は5月に三城牧場から百曲がりの登山道を登り、熔岩台地中央部の塩くれ場から山頂の王ヶ頭、さらに武
 石峰へと歩を進めたと推測出来ます。
【 美ヶ原高原の名称 】                  
 松本平、安曇野では美ヶ原高原を東山、北アルプス連峰を西山と呼んでいましたが江戸時代の文献『信濃奇勝録』に美ヶ
 原の名称があります。登山、トレッキングがスポーツやレジャーではなく、山岳信仰の修行であった江戸時代には既に、
 この名称が使われていた事になります。
 余談になりますが、王ヶ鼻の石仏は木曽の「御嶽信仰」に由来し、御嶽山の方角を向いています。今でも王ヶ鼻ではブロ
 ッケン現象(背後からさしこんだ太陽光が、影側にある雲や霧に散乱され、影の周りに、虹の光輪が現われる現象)を見
 る登山者の方がいます。西洋でブロッケン山の妖怪と呼ばれるこの現象が日本では阿弥陀如来のご来迎と言われます。
【 美ヶ原高原と人との関係 】               
 美ヶ原は100万〜80万年前、火山噴火で粘度の低い溶岩が広がって形成されたといわれます。
 石器時代に、黒曜石の採取が行われていた山であり、平安時代末期に、馬の放牧に利用されていたとの記録が有ります。
 現在の美ヶ原牧場は明治42年、小岩井品三郎氏が、松本市内の乳牛を放牧したのが始まりです。
 昭和30年代までは農林業も盛んで、現在の美ヶ原高原の八合目あたりまでの落葉松の多くは薄川(すすきがわ)の治水
 対策、水源涵養等の目的で行われた植林による人工林です。
 古来から人の手が入り、牛馬が歩く事によって、熔岩台地は森とならず、草原のままの状態が保たれたようです。
【 美ヶ原高原の気温 】                  
 美ヶ原山頂(王ヶ頭)は真夏でも20℃を越える日はまず有りません。厳冬期は、−30℃になる事も有ります。
 台上まで自家用車で移動できるため、その高度を忘れがちですが、美ヶ原は標高2000m(平均1850m)の高原台地です。
 毎年、9月中旬以降にTシャツ等の軽装で唇を紫色にした観光客の方を見かけますが、レインウェアの上着等の軽くて
 荷物にならない上着を準備するだけで防風、防寒対策になります。ぜひご一考ください。
【 霧の名所? 】                     
 美ヶ原高原は、3日に1度は霧が発生すると言われる程、頻繁に霧が発生します。統計的に、発生時刻は午前10時頃が
 最も多いとされています。
 以下の写真を参照下さい。(被写体は王ヶ頭付近の道標で距離は5m前後)
晴れ曇り
【 美ヶ原高原の地形 】
 王ヶ鼻、王ヶ頭付近は急峻な地形の風衝地と言う特異な地形をし
 ています。
 厚さ数pの板状の鉄平石が幾層にも重なった『板状節理』と言う
 世界的に見ても、珍しい地形です。

【 美ヶ原高原の自然保護への意見は十人十色? 】
 ビ−ナスライン建設の際、山頂王ヶ頭を経由して天狗の露地駐車
 場までの台上を一般車両を通過させる車道とするか否か国をあげ
 て大論争となった経緯があります。大石環境庁長官(当時)は車
 道化をストップさせる裁断を下し、現在も指定許可車両以外は通
 行出来ません。
 この問題は現在も様々な意見があり、観光資源として見た場合、
 身体に障害のある方や、高齢者の車両通行に一定の便宜を図るべ
 きでは?といった意見がある反面、電気自動車やロープウェイ等
 の公共輸送手段を準備して、現在の指定許可車両を含めた全車両
 通行禁止とすべきといった意見もあります。

王ヶ鼻の板状節理の上で御獄を見つめる石仏群
 また熊笹の繁殖による在来の高山植物の植生変化、落葉松の人工林についても、自然の変化にまかせる方が良いとする
 意見がある一方、美ヶ原と人の関わりの歴史から植生保護、人工林の維持のためにも、最低限度人間が手を入れ現状を
 維持すべきとする意見があります。
 【美ヶ原高原と人との関係】にも述べましたが、古来から大衆的な山、生活の山であった経緯に、長野県人の議論好き
 な性格も加わって様々な意見がそれぞれに説得力を持って語られています。
【 海を渡る蝶アサギマダラ 】
 夏の美ヶ原高原を優雅に舞うアサギマダラは、信州に産する唯一のマダラチョウ科のチョウです。
 美ヶ原高原ではヨツバヒヨドリの花を好んで吸蜜する姿を目にする事が多いですが、生態はまだ謎が多い蝶で、秋にな
 ると高原を離れます。マーキング調査が行われていますが、美ヶ原でマーキングされたアサギマダラが遠く沖縄で再捕
 獲された事はニュースにもなりました。
 長野県内でのマーキングでは、「長野」、「ナガノ」といった県名と個体番号(美ヶ原の場合にはUTU+数字)が書かれ
 ているようです。マーキング調査に興味のある方はアサギネットのホームページをご覧下さい。
【 以外?映画・TVロケ地としての顔 】
 TVの観光、旅番組や、2時間ドラマなどのロケ地として使われることは容易に想像できますが、美ヶ原高原自体を舞
 台にした映画は「アモーレの鐘」(製作:1981年 配給:東宝 城戸真亜子)が有名です。(出演者敬称略)
 以外な番組、ドラマでは、「新選組!!土方歳三最期の一日(山本耕史)」の戦闘シーン(歴史上はもちろん北海道の函
 館が舞台ですが)で台上の牧場が、「シルク」では美ヶ原山麓の入山辺地区に江戸時代の山村のロケセットが組まれ、
 撮影に使われました。(興味の有る方は作品のエンディングクレジットで確認できます。)
 平成13年10月1日に松本市観光温泉課にロケ支援係が設置されましたので、美ヶ原以外でも松本市がロケ地として使わ
 れることが多くなっています。ロケ支援/放送番組の情報(エキストラ募集等を含む)は松本市公式ホームページで確
 認できます。
 最近の松本ロケの映画
 ・「ミッドナイトイーグル」(2007年11月23日公開 大沢たかお/竹内結子/玉木宏)
 ・「シルク」(2008年1月19日公開 マイケル・ピット/キーラ・ナイトレイ/役所広司)

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